とりあえずでも、育児にかかわることで「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンの分泌が促され、子どもに愛情を感じられるようになる[注4]。そして、子どもに愛情を感じると、一層子どもと関わりたくなり育児時間が伸びる。この好循環が、長期にわたる変化を男性に生み出しているのではないか。

男性の家事・育児参加が増えることは、女性の労働市場における活躍はもちろん、出生率の上昇にもつながると見られるため、こうした傾向は好ましい。多くの人を苦しめるコロナ禍であるが、悪いことだけではなかったようだ。

※出典
[注1]大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第5回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」
[注2]・東京大学プレスリリース「在宅勤務が『イクメン化』を促進するという因果関係を実証」、2021年10月21日、https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400171054.pdf
・Chihiro Inoue, Yusuke Ishihata, Shintaro Yamaguchi, 2021, "Working from Home Leads to More Family-Oriented Men", University of Tokyo, CREPEDP-109.
[注3]・Farré, Lídia and Libertad González. 2019. "Does paternity leave reduce fertility?" Journal of Public Economics 172:52–66.
・Patnaik, Ankita. 2019. "Reserving Time for Daddy: The Consequences of Fathers' Quotas." Journal of Labor Economics 37 (4):1009–1059.
・Tamm, Marcus. 2019. "Fathers' parental leave-taking, childcare involvement and labor market participation." Labour Economics 59:184–197.
[注4]・Eyal Abraham, Talma Hendler, Irit Shapira-Lichter, Yaniv Kanat-Maymon, Orna Zagoory-Sharon, Ruth Feldman, "Father's brain is sensitive to childcare experiences," Proceedings of the National Academy of Sciences Jul 2014, 111 (27) 9792-9797.
・池谷裕二、「パパは脳研究者」、2017年、クレヨンハウス
山口慎太郎
東京大学経済学研究科教授。内閣府・男女共同参画会議議員も務める。慶応義塾大学商学部卒、米ウィスコンシン大学経済学博士号(PhD)取得。カナダ・マクマスター大学准教授などを経て、2019年より現職。専門は労働市場を分析する「労働経済学」と、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」。著書『「家族の幸せ」の経済学』で第41回サントリー学芸賞受賞。近著に『子育て支援の経済学』。

[日本経済新聞朝刊2021年11月22日付]