2021/11/23

また長時間労働の要因として、かねてより問題視されているのが国会対応だ。官僚は議員が国会で翌日に質問する内容を事前に入手し、政府答弁を作る。ある若手官僚は「議員から質問をもらう時間が18時になる場合もあり、そこから答弁を作ると(終電時間を過ぎて)タクシー帰りになってしまう」と実情を明かす。この問題の改善も急務だ。

一方、働き方改革という面では明るいニュースも出てきている。20年度、男性の国家公務員(一般職・常勤)の育児休業の取得率は、前年度比23.4ポイント上昇の51.4%と、育休制度を設けた1992年以降で初めて5割を超えた。政府は20年4月から、上司が本人と相談しながら計画的に育休取得を進める取り組みを実施し、管理職らの人事評価にも反映させている。これらの施策が奏功したとみられる。

川本氏は「組織運営上の問題になるのは代替要員だ。女性の産休・育休中に(ワークシェアリングの活用を含め)代替要員を確保する取り組みは増えている。男性の育児休業に対する代替要員の準備も必要であることを周知していく」と説明する。

仕事のやりがいに魅力を感じる若手も

国家公務員の志望者が減る一方で、申込者に占める女性の割合が年々増えていることも、女性登用の面では前向きな話題だ。人事院によると女性の割合は21年度に初めて4割を超えた。

総合職で採用されれば、政策立案などに携わる将来の幹部候補として扱われる。民間に比べて安定した雇用環境や仕事のやりがいに魅力を感じる若手の女性は少なくない。

農水省の落合真衣さん

総合職試験を経て農水省に入省した2年目の落合真衣さんは「日本の停滞感をどう変えることができるか、考える側になりたかった」と官僚を目指したきっかけを語る。人口減や食の欧米化でコメの需要が減るなか、全国の農家を回り、一軒一軒にコメの作付け転換をお願いする取り組みなどを進めている。

労働環境には不安もある。「仕事の内容自体も労働時間の面でも決して楽ではない」と落合さん。そのうえで「日本の課題に向き合えるのは国家公務員ならでは」とやりがいを語ってくれた。

今後も女性の国家公務員を増やし、管理職まで育てられるか。働き方改革や幹部の女性登用に向けた一層の取り組みが欠かせない。

■男女ともに悩める風土に
霞が関の一画には木造の外観をした保育所がある。夕方になると仕事を終えた男性官僚が子供を迎えにいく姿をちらほらと見かけることがあり、男性も積極的に育児にあたるのが当たり前という職場へと徐々に変わりつつあるのだと感じた。

それでもなお「子育てなど家庭との両立でいえば、いままで(の官僚)は奥さん側に頑張ってもらって何とかなっていた部分が大きかったのだと思う」(落合さん)との声があがる。若手の女性らが抱くキャリアへの不安は尽きない。男女ともに悩めるような組織風土の醸成はまだ道半ばだ。(千葉大史)

 [日本経済新聞朝刊2021年11月22日付]