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日本を離れ、海外で暮らす人たちが徐々に増えています。外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2022年10月1日時点で生活拠点を日本から海外に移した「永住者」は過去最高の約55万7000人。特筆すべきは、女性の永住者が増えているということです。コロナ禍もある中、なぜ国外に目を向けるのでしょうか。人生100年時代、働き方は国内にとどまらず多様化の様相を呈しています。

永住者が20年連続で増加

上述の統計では、永住者のほか在留期間が3カ月以上の「長期滞在者」の人数を推計しています。海外で暮らす長期滞在者と永住者は合計約130万9000人(22年10月1日時点)、このうち長期滞在者はコロナ禍で20年から3年連続で前年比減となっています。一方、生活拠点を海外に移した永住者は03年から22年まで20年連続で前年比増に。最新となる22年の永住者の男女別構成比をみると、女性が約62%となっています。永住者の地域別の人数では、北米(約27万4000人)、西欧(約9万人)、オセアニア(約7万6000人)の順で人気です。

1990年時点では、永住者数は約24万6000人、女性の割合は約54%と男女ほぼ同等でした。調査統計では職業や年齢などの属性は明らかにされていません。2022年までの推移をみると、着実に女性の永住者が増加しています。男性もほぼ同様の傾向です。ただ、女性の伸び率が男性の伸び率を上回った年の方が多く、永住者における女性の構成比が高まっていった格好です。

「海外で生活したい」。そう思った場合、例えば、2国・地域間の取り決めに基づくワーキングホリデー制度を利用すれば、比較的容易に海外で働くことも可能でしょう。ただし、ワーキングホリデーはあくまでも休暇目的の制度。旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認めるもので、年齢や期間も限られます。

一方、永住権を得るとなれば、簡単に実現できるものではありません。一定の語学力や就労経験、資格、経済的に自立できる能力など、それぞれの国で様々な要件が課されています。そうした高いハードルを越えてまで、なぜ海外を目指す人たち、特に女性が年々増えているのでしょうか。

写真はイメージ=PIXTA

写真はイメージ=PIXTA

なぜ海外に目が向くのか

女性の永住者が増加していることについて、私はそれほど意外に感じていません。個人的な見解ですが、日本だからこそ考えられる要因があると思うからです。

本題に入る前に、まずは男女共通して想定される理由として、経済不安、IT(情報技術)の進化、グローバル化などが挙げられます。

ここ30年間、日本の平均賃金がほぼ上がっていないことはご承知のとおりです。経済協力開発機構(OECD)35カ国の国際比較データをみても、21年で日本は24位と下位グループに。1991年ごろは英仏独など他のG7(主要7カ国)諸国とも大差はなかったのに、時間とともに順位が低下し続けています。

このように給与が上がらない状況でも暮らし続けられたのは、物価の上昇が世界レベルで見ると限りなく低かったからと言えます。しかしながら、デフレから抜け出せない状況があまりにも長く続いてきたことで、日本経済に対して希望を見いだせないという雰囲気が充満しています。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を契機とする世界的なインフレはウクライナ危機などを受け、加速しています。日本も円安などの影響を受けており、国内でもインフレが私たちの生活を脅かしています。それだけに、インフレに追いつくことのできない賃上げに、先行きの経済不安を感じるのは当然とも言えるでしょう。

そうしたなか、コロナ禍によってリモートワークが日本でも一気に普及。場所を問わず働けることは、国内にとどまることなく、海外でも可能だとリアルに感じられるようになりました。インターネットができる環境にあれば、様々な情報を入手することができます。

こうしたITの進化も相まって、グローバル化が急速に進んでいます。すでにSNS(交流サイト)を使えば世界と簡単につながれることを私たちは知っていますが、働き方への影響も無視できません。優秀な人材はどの国の企業も求めており、グローバリゼーションの進展によって海外人材を活用することは、珍しいことではなくなっています。

越境テレワークも不可能ではなくなるなか、例えば、米国のディール社は、世界各国で雇用した人材を顧客企業に派遣する「EOR(Employer of Record:エンプロイヤー・オブ・レコード)」サービスを提供しています。各国の法律や文化を踏まえつつ、労務管理や給与計算なども担うことで複雑な手続きも解消。全世界に広がるネットワークから人材を検索することもできます。

こうしたサービスが広がることで、国境の壁はさらに低くなっていくでしょう。生まれた国で仕事をするのが当たり前、というこれまでの常識は、もはや通用しなくなっていくかもしれません。

このような社会経済情勢を鑑みれば、日本以外で働く選択肢を考えたとしても不思議ではないでしょう。仕事に限らず、閉鎖的な教育事情に危機感を募らせている子育て世代も。こうした層においては、我が子に国際感覚を身に付けさせ将来の選択肢を広げてあげたいと教育目的で海外移住を検討する方も少なくありません。

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