社会課題の解決のヒントに

青山ブックセンター本店の本田翔也さんのおすすめは『マイノリティデザイン』と『25歳からの国会』

王道のビジネス書とは少し違う視点から選んでくれたのは、青山ブックセンター本店の本田翔也さん。そのうちの1冊、澤田智洋『マイノリティデザイン』(ライツ社)は、障害を持つ子どものいるコピーライターが、そうした弱みを課題や価値ととらえ直して仕事を作り出してきた活動の記録だ。

著者は「すべての弱さは社会の伸びしろ」「あなたの持つマイノリティ性=『苦手』や『できないこと』や『コンプレックス』や『障害』は克服しなければならないものではなく、生かせるものだ」と考える。義足をファッションアイテムとして再解釈するファッションショーや、ひとりの身体障害者の悩みから新しい服を作るレーベルなどのプロジェクトストーリーから、仕事を通じて少しでもよい社会をつくりたいという願いを形にする仕事術や思考法が語られる。「ビジネスを社会課題の解決につなげていく動きが若い世代の共感を集めている。そうした関心の真ん中をついた本」と本田さんは話す。

もう1冊のおすすめにビジネス書からは少し外れた平河エリ『25歳からの国会』(現代書館)を選んだのも、社会課題への関心からだ。著者の平河氏はIT企業勤務を経てコンサルタントとして独立、政治解説ブログ「読む国会」が話題になったライター。総理大臣と国会に始まって、国会議員の仕事や野党の役割、選挙制度やジェンダーまで、議会政治の歴史やしくみ、慣習などを平易かつ中立的に解説している。「社会課題の解決となると、ビジネスだけでなく政治というツールも大事になる。この本の特徴はわかりやすさ。ビジネスパーソンも関心を持ってほしい」と本田さんはいう。

聴くことの力、多面的に

リブロ汐留シオサイト店の河又美予さんのおすすめは『LISTEN』と『エンタメの未来2031』

リブロ汐留シオサイト店の店舗リーダー、河又美予さんはよく売れた本から1冊、注目の新刊から1冊を選んでくれた。よく売れた本はケイト・マーフィ『LISTEN』(篠田真貴子監訳・松丸さとみ訳、日経BP)、注目の新刊は北谷賢司『エンタメの未来2031』(日経BP)だ。

『LISTEN』は聴くことの力を多面的に描いた本。ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなどで数々のインタビューやコラムを書いてきたジャーナリストによる著作だ。聴くことに関する学術的な研究を詳しく調べた上で、集中して聴くことを仕事にしている牧師や心理療法士といった職業の人から、著名人、市井の人などにも話を聴きながら、聴くことの意義を再認識させる。豊富な実例や学術的なエビデンスが魅力の一冊だ。「テレワークが広まり定着した時期だからこそ、改めて注目されたのか手に取っていく人が多かった」と河又さんは話す。

もう1冊の『エンタメの未来2031』は研究・実務の両面から米国のメディア・エンターテインメント業界に詳しい著者によるエンターテインメントビジネスの未来予測。先に触れたNFTをはじめ、導入が進む様々なデジタル技術でコンテンツそのものから届け方や楽しみ方まで大きく変化する未来図と、誰が勝者となるのかが映画、放送、音楽、スポーツ、演劇の各論に至るまで展望されている。「周りにマスコミ関連の企業が多いので注目されている本」と河又さん。メディア企業の注目は当然としても、デジタル時代のエンタメビジネスは通信からデジタル技術、権利ビジネスなど広がりが大きいだけに他業界でも押さえておくとよさそうだ。

(水柿武志)