そのためには、いろいろな人と話をして、自分は他人に「どう見えているのか」を知ることです。客観的な意見を言ってくれる親しい知人をもっておくことも大事になってきます。

そして、もし自分には「人材をマネジメントする力」が足りないと感じるなら、自分が伝えたい内容について、聞く方の身になって話せていない可能性があります。社内外のコミュニケーションにおいて「何をどのタイミングで話せば、きちんと相手に伝わるのか」に意識を向けて、感覚をつかんでいくことです。

―マネジメント層の転職の場合、採用企業側の人事担当者はどこを見て判断しているのですか。

一番注目しているのは「この人はどのような経験をして、それによってどんなノウハウを持っているのか」だと思います。ですから、どんな経験をしてきたかをリアルに説明できることが大事です。単に「私はマネジメントスキルがあります」と言われても、相手はそれをリアルにイメージすることはできません。どんなところに気をつけてマネジメントをやってきたのか、その中でどのような苦労があったのか、経験則があれば語れるはずです。

心理的安全性をつくれる力

―リモートワーク時代にマネジメントに求められる役割は変わりましたか。

リモートワークが普及し、マネジメントのやり方は大きく変わってきたと思います。リモートワークでは1人1人の状況が見えにくいので、個別の状況を把握して適切な対応をとりにくくなっています。つまり、マネジメントが難しくなってきているということです。

私は「個別最適のマネジメント」と呼んでいますが、個人に寄り添って問題を解決していくきめ細かいフォローが、マネジメントに求められるようになってきていると思います。

ただ、マネジメント層の転職における評価軸はリモートであろうとなかろうと変わりません。対話力をベースに、昨今で言う「心理的安全性」をつくることができる人。つまり、「相手に不安を与えない」「この人には何を言っても大丈夫」「この人は自分の成長を助けてくれる」と部下に思われる人が転職市場でも必要とされています。それがリモート時代になってより顕著になったと考えればいいと思います。

―転職に迷っているマネジメント層にアドバイスをお願いします。

変化が激しい時代ですから、今までの経験から得られた知見を「自信」としてもっておくことはいいと思いますが、それを「いつ・どこで・どう出すか」に注意が必要です。状況は目まぐるしく変わるので、かつての成功体験は忘れて、新しい領域に踏み出す勇気をもつことが大事だと思います。

わからないことでも頑張って学び続けて習得し、新しいものをどんどん吸収しようという姿勢で取り組むことです。それを邪魔するのが、プライドであり過去の成功体験だと私は思っています。常に自分の中に新しいものを吸収するスペースをもって臨んでいただきたいと思います。

油布顕史(KPMGコンサルティング)
組織・人材マネジメント領域で20年以上のコンサルティング経験を有する。大手金融機関・製造業・サービス業界の人事改革支援に従事。事業会社、会計系コンサルティングファームを経て現職。組織人事にまつわる変革支援-組織設計、人事戦略、人事制度(評価、報酬、タレントマネジメント)の導入・定着支援、働き方改革、組織風土改革、チェンジマネジメントの領域において数多くのプロジェクトを推進。企業向けの講演多数。

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