異動先は人材関連事業部で名だたる大企業をクライアントとする法人営業部(総合企画部)。百戦錬磨の精鋭がそろう部署だった。そこに、誰もがうらやむ経営企画室から、自らの意志で若手が乗り込んできたのだから「お手並み拝見」となるのは想像に難くない。

しかし、高校の時よろしく凡事徹底を心がけ、当人いわく「運にも恵まれた」結果、初年度でいきなりMVPを受賞した。そのセレモニーでのあいさつが、これまた先輩たちの度肝を抜いた。

MVP受賞あいさつで「いい仕事していない」と反省

「MVPを頂けるのは有り難いと思いますが、私は今、悔しいです。この1年を振り返って、私が死ぬ時に思い出すような『いい仕事』をしたかといえば、1つもしていない。なんと無駄な1年を過ごしてしまったことかと深く反省しています。来年こそは、自分が死ぬ時に思い出すような、世の中にインパクトを与えられる仕事を1つでもすることを自分に約束して、受賞のあいさつといたします」

入社3年目にしてトップレベルの先輩たちを易々と凌駕(りょうが)し、さらに社会へのインパクトという一段上のレベルを追い求めようとする後輩を「生意気」と見る向きもあったに違いない。

若手らしく「皆さんに支えてもらったおかげです。来年もがんばります」とでも言っておけば波風も立たないのに、なぜ挑発的ともとれるあいさつをしたのか。そう問うと瀬名波氏は「私、不器用なんですよね。だから私のこと嫌いな人もいっぱいいると思います」と苦笑しつつ、こう続けた。

「もともと3年で辞めるつもりですから、この会社で勤め上げて偉くなりたいとか、これっぽっちも思っていませんでした。だから思っていることを素直に言えたんでしょうね。それ以降もずっと好きなことは120%頑張るし、自分が違うと思うことにはノーと正直に言ってきました。私にとっては社内的な評価より、自分の仕事が世の中にどうつながり、どういうインパクトを与え得るかのほうが、はるかに重要なのです」

高校時代から培った「世界と自分は地続きだ」という感覚。好奇心のおもむくまま身の丈以上の場所に自ら飛び込み、「なんくるないさー」の精神で壁を突破していく行動力。この2つは、その後の彼女のキャリアを飛躍させる原動力となった。

後半では、入社6年目のターニングポイントとキャリア最大の危機、さらに現在、リーダーとしてけん引する「サステナビリティへのコミットメント」について聞く。

(ライター 石臥薫子)

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