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八重洲ブックセンター本店の川原敏治さんのおすすめは『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』と『リスキリング』

八重洲ブックセンター本店の川原敏治さんのおすすめは『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』と『リスキリング』

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。今回はいつもと趣向を変えて、定点観測書店と準定点観測書店のビジネス書担当者に年末年始に読んでおきたいビジネス・経済書を推薦してもらった。対象にしたのは2022年刊行の本。今年の売れ筋や注目の近刊が並んだ。この年末年始は移動の自粛要請などは出ていないが、外出を控えて過ごす人も少なくないだろう。長めの休みを読み逃した本を読む時間にあててみてはどうだろう。

>>2022年 書店員おすすめビジネス書の一覧はこちら

『実践 行動経済学』の完全版が刊行

「目立ったベストセラーがあまりなく、これという本を選ぶのがなかなか難しい1年だった」。八重洲ブックセンター本店でビジネス書を担当する川原敏治さんは22年のビジネス書の出版動向をこう解説してくれた。そんな中、選んだ1冊がリチャード・セイラー、キャス・サンスティーン『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』(遠藤真美訳、日経BP)だ。

「変化が見通せない時代にこれまでの知見や学問を再編集して改めて考えさせてくれる本」と川原さんは言う。原著は米国で08年に刊行され、翌年、日本でも翻訳出版された。これに加筆・修正して完全版としたのが本書だ。セイラー氏はこの間、17年にノーベル経済学賞を受賞した。

人々を賢い選択へと導くちょっとした工夫のことをナッジ(nudge)という。これを中心テーマに据え、「使える経済学」としての行動経済学をわかりやすく解説した内容だ。大枠は旧版と同じだが、ウェブサイトでユーザーを意図的に誘導するダークパターンの問題など、いくつかの内容が付け加わっている。

気候変動や環境へのナッジ活用についても考察を増やしており、新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大など地球規模の問題解決への有効な視点を提供してくれる。

第一人者が考える「物価とは」

紀伊国屋書店大手町ビル店の桐生稔也さんのおすすめは『物価とは何か』と『「静かな人」の戦略書』

紀伊国屋書店大手町ビル店の桐生稔也さんのおすすめは『物価とは何か』と『「静かな人」の戦略書』

学知をわかりやすく一般読者向けに書いた本という視点は、紀伊国屋書店大手町ビル店の店長、桐生稔也さんが推薦してくれた渡辺努『物価とは何か』(講談社)にも共通する。「ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギーコストが上がった影響を受けて物価が上がり、日々の生活の中でも物価高が意識されるようになって、多くの方が手に取っているようだ」と桐生さんは話す。

「物価は蚊柱である」。そんな比喩から本書は始まる。直感や例え話で一般読者に寄り添いながら、物価研究の第一人者とされる渡辺氏は、「物価とは何か」について、経済学を使って考えていく。

「この蚊柱は、自社製品の価格を自らの意思で決めることを諦め、後ろ向きの経営に走る企業の群れそのものではないかと私は危惧しています」など、重い指摘も少なくない。「物価に関する経済学者の知見(その中でも選りすぐりのもの)を皆さんにお伝えし、皆さんの直観をさらに豊かなものにする」のが本書の目的だと著者はいう。豊かになった直観を手がかりに、自身の経済行動や自らが関わる企業行動を見直してみるのもよさそうだ。

2人が選んだもう1冊は、川原さんが後藤宗明『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター)、桐生さんがジル・チャン『「静かな人」の戦略書』(神崎朗子訳、ダイヤモンド社)だった。

『リスキリング』は、ジャパン・リスキリング・イニシアチブ(JRI)の代表理事を務め、リスキリング(学び直し)の伝道師ともいうべき著者が、リスキリングが必要となる背景から始まって個人は何をすべきか、どのようにすればよいか、リスキリングの全容を明らかにする。

「岸田文雄首相が施政方針演説で個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じると表明したこともあって、リスキリングは大きな潮流になりつつある。そのことを知るにはちょうどいい1冊」と川原さんは話す。

桐生さんが選んだ『「静かな人」の戦略書』は、内向型の人が職場で活躍できる実践的な方法を説いた本。米国や台湾で活躍する台湾人女性のビジネスパーソンが著者だ。「海外の翻訳自己啓発本に人気が集まったのが22年の特徴」と桐生さん。発売からあまり時間のたっていない7月末に同店を訪れた折、本欄でも「内向型が力を発揮する方法 自身の経験を詰め込み伝授」の記事で紹介した。

2つの本は個人がビジネス社会を生き抜く力を高めるという点で共通する。学知で大きな課題に向き合う一方、個人としても自分に合ったスキルをアップデートしたり再認識したりする。2人のおすすめは、そんな二正面作戦を促しているようだ。

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