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「いい人なんだけど、将来性がない」

高橋 個人的におすすめしたいのは『セレステ∞ジェシー』ですね。「セレステとジェシーは理想的な夫婦。だが、会社の経営者として充実した日々を送る妻セレステに対し、夫ジェシーは売れないアーティスト。ジェシーとの未来に不安を感じ始めたセレステは、『最高に気の合うジェシーとは永遠に親友でいたい』と提案してふたりは離婚に向けて別居をすることに。しかし、あるできごとをきっかけにセレステはジェシーの大切さに気付く」というお話。

ジェーン・スー 仲の良い夫婦なのですが、妻にとっては夫が頼りないんですよね。夢を追いかけていて現実と向き合えていないと言いますか。ただ、困難に直面していない時はこんなに気の合う人はいないと思える。アラサー女子がよく話す「いい人なんだけど、将来性がない」と似ているのかな。私はこの発言を聞くたびに「自分の将来性を棚に上げて、何を勝手なことを言っているんだ!」と思っちゃうけど(笑)。

激しい衝撃をくらう作品

高橋 「最高に気の合うジェシーとは永遠に親友でいたい」ということで離婚を切り出すセレステはさすがに都合良すぎますよね。案の定ジェシーに新しい恋人ができて、そこではじめて彼女は自分の傲慢さに気付かされるわけです。これは失恋直後に見ると相当食らいますよ。

ジェーン・スー 皆さん、仕事に影響が出ないように週末に見てくださいね(笑)。アラサー、アラフォー女性が、人生にたかをくくってしまう瞬間はある。「この人でいいのか」と思いがち。そういうことを言っていると、こうなってしまうぞと教えてくれる映画です。

高橋 セレステのように恋愛で慢心して痛い目に合ったことがある人は男女問わず少なくないと思います。気がついたときには取り返しのつかないことになっていた、という。自分自身、この映画を見るといまだに過去の失恋の古傷がうずきますからね。そのぐらいリアリティーがある。

「失恋したときに見ると、キツいですね。荒療治としてはいいかもしれません」(高橋芳朗さん)

高橋 まだ失恋の傷が十分に癒えていないにもかかわらず、半ば強引に新しい恋を走らせようとするセレステの姿がまた痛々しくて。「失恋あるある」ですよね。ジェシーと別居する前に購入した家具が届いたものの、結局ひとりで組み立てられなくてジェシーを呼び出すシーンも印象的です。

ジェーン・スー 彼がいないと何もできない自分に気付くんですよね。最近、恋をしていない人には「恋はこういうものだ」と思い出せる作品ですね。

2人は2021年12月『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない』(ポプラ社)を出版
後編でもおすすめ作品の紹介と、ラブコメ作品にはまったきっかけについて教えてもらいました。後編は以下から※NIKKEI STYLEから他のサイトに飛びます。
ジェーン・スー『好きなことを続けていれば形になる』」へ続く

(取材・文 齋藤有美=日経xwoman doors、写真 鈴木愛子)