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地形や地図は情報の宝庫だ。丹念に読み解くことで都市の成り立ちや背負ってきた歴史の一端が垣間見える。『地形で読む日本』は歴史地理学者がいろいろな古地図を読み取り、地形を観察して古代の宮や都の変遷、城が築かれた立地、城下町や都市の発達を考察する。歴史好きが楽しみで読むのはもちろん、読み方次第でさまざまなビジネスのヒントをたぐり寄せることもできそうな教養書だ。

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著者の金田章裕氏

著者の金田章裕氏

著者の金田章裕氏は1946年生まれ。74年京大大学院文学研究科博士課程を修了し、一貫して学者の道を歩んできました。専門は人文地理学、歴史地理学。94年に京大教授となり、2001年に同副学長、08年には人間文化研究機構・機構長などの要職を歴任、現在は京都府立京都学・歴彩館館長を務めています。最近は歴史地理学を元にした景観の見方を一般の人向けにわかりやすく解説した本を次々と出版してきました。本書もそんな一冊です。

立地や地形から見えるものとは

地理と歴史はダイナミックに絡み合っています。幕末維新の主力となった勢力が薩長土肥の4藩であったことを例に挙げて、①幕政の中心地だった江戸から遠く離れていた②いずれも海に面していた――という2つの位置の共通性が幕末のこの時期に大きな意味を持ったという話から、本書は始まります。「周知の手法だが、地図を読み解いて立地状況を理解し、また地形環境を知ることが、このような理解を導く一つの重要な手掛かりとなろう」と著者は言います。

この手法で「国土をどのように認識してきたのか」を古地図から読み解くのが第1章です。

 「古地図(こちず)」とは文字通り古い時代の地図のことである。しかし、その特徴は他にもある。古地図は、情報や測量技術が不十分だった時期に、世界や国といった広い空間、また国の中の土地の位置やあり方を、どのようにとらえているのかを表現し、伝えようとする貴重な方法だった。
(第1章 国土をどのように認識してきたのか――日本図を読む 14ページ)

最も早い時期の日本地図とされる仁和寺蔵日本図(1305年頃のものとされる)からは蝦夷(北海道)が古代の国土の認識に入っていなかったことがわかります。同様に琉球(沖縄)も江戸期の地図に登場したり描かれなかったりします。幕府による国土把握の意図が折々に変化していた様子が見てとれます。

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