名手が紡ぐ鴨尽くしのラーメン 東京・八王子に降臨

鴨中華そば楓の看板メニュー、紀州鴨中華そば

◎鴨中華そば楓 (京王八王子)

通常であれば、複数の店をまとめて紹介しているのだが、今回はあえて1店だけを詳しくご紹介することとしたい。というのは、今回ご紹介する『鴨(かも)中華そば楓(かえで)』は、2021年下半期における最大の話題店となる可能性が限りなく高い稀有(けう)な新店だからだ。

この店は今年7月下旬にグランドオープンした、紀州鴨を用いた「鴨ラーメン」の専門店である。同時に、八王子エリアを代表する実力店のひとつ『らーめん楓』のセカンドブランドという位置付けも有する。

まずは『らーめん楓』について、少しばかり行数を割くこととしたい。

『らーめん楓』は2003年12月、東京市部屈指のラーメン激戦区・八王子で産声を上げ、幾度もの紆余曲折(うよきょくせつ)を経ながらも、約18年もの間、一線級の人気店として君臨し続けてきた由緒正しき実力店。多摩エリアに生活拠点を置くラーメン好きなら、知らない者などいないほどのビッグネームだ。

『楓』を率いるのは、井ノ川晴樹氏。より正確には、井ノ川氏は『楓』の創業者であり、同店を擁する「スープ&スマイル」(東京都日野市)の代表取締役だ。

同氏は、『楓』を創業した03年当時から、「笑顔の輪を広げていくラーメン屋になること」を座右の銘に掲げ、「どのような味のラーメンを、どれくらいの価格で提供すれば、お客さんにもっと喜んでいただけるのか」を、昼夜を問わず考え抜き、枚挙にいとまがないほどの味のブラッシュアップを重ねてきた、ラーメン職人の「鑑」のような人物である。

その試みは、八王子を代表するラーメン界の作り手となった現在も、なお止まることはない。つい最近(21年9月18日)も、提供メニューの大幅リニューアルを敢行したばかりだ。

決して現状に安住することなく、常により良い方向性を模索しようとする同氏の生き方は、作り手のみならず、食べ手をも魅了する。同店に数多くの固定ファンが付いているのも、『楓』の歩みを心から応援しようとする者がたくさんいることによるものだと思う。

と、前置きが長くなったが、そんな井ノ川氏が、満を持して、1号店よりやや高級感のあるラーメンを、ラグジュアリーな空間で召し上がってもらうための場として始動させたのが、『鴨中華そば楓』だ。