政治家の街頭演説に違和感
ポリポリを発想したのは偶然の産物だった。19歳の時に2017年の衆院選で立候補者の街頭演説を聞いて強烈な違和感を覚えたからだ。一方的に大声で自分の名前を連呼しながら、政策を訴えるばかり、聴衆はほとんど反応していない。

「政治家はアナログだし、なんか怖い。双方向のネットを活用すれば、社会はもっと良くなるのでは」と思った。政治や行政の世界はデジタル化で大きく遅れている。今も電話やファクスでやり取りする政治家や役所が少なくない。政府や自治体と国民の間に深い溝があり、若者などの国民の声を政策に反映するのは難しい。しかし、「今の若者も環境問題などの政策には高い関心を持っているはず」と考えた伊藤さんは大学の仲間と起業を決めた。
18年にポリポリのサービスを開始。持ち前の行動力を発揮し、当時の首相を訪問するなど政治家とも頻繁に会った。与野党の国会議員のほか、経産省など中央省庁や地方自治体も活用するようになった。若者に分かりやすいサイトのデザインを心がけ、有識者のコメントを集め、座談会も次々仕掛けた。ポリポリのメンバーも増え、市民と政治・行政をつなぐプラットフォームとしての地位を確立した。
母校の東海OBには元首相の海部俊樹氏や一時政治家を目指した建築家の黒川紀章氏もいる。しかし、伊藤さんは「別に政治家になりたいとは思わない。ただ、もう政治家は怖くないし、政治は『愛』だと思っている。とにかくみんなにとってプラスになるサービスを提供したい」という。7月の参院選に向けてポリポリのサイトはにぎわいを見せているという。
(代慶達也)