SNSとの付き合い方を考える

前田 私の推し本はジョーダン・シャピロ著『ニュー・チャイルドフッド』(関美和・村瀬隆宗訳)です。昨年発刊されてベストセラーになった『スマホ脳』は、スマートフォンの弊害を脳科学の視点から考察した本ですが、いまやスマホと私たちの生活は切っても切れない。その中でどう子育てをすればいいのか、ヒントを与えてくれる一冊です。

私自身は、子どものころに流行していた家庭用ゲーム機にはほとんど触れずに育ちました。それもあって、子どもにゲーム機やスマホ、タブレット端末などを与えることに批判的でした。しかし、そうしたデジタル機器は現代ではオンラインでつながり合うコミュニケーションツールです。かつて、活版印刷機が開発された時代には、「読書は子どもを孤独にする」と批判されたといいますが、実際には、それによる恩恵のほうが大きかった。デジタル機器についても同じことがいえます。その意味で、著者の「オンラインのツールによって子どもたちはつながり合う世界に生きる準備ができる」という主張は説得力がありました。

――新しい技術をいたずらに批判するのではなく、技術と上手に付き合っていくということですね。

前田 子育てをする上では、SNS(交流サイト)との付き合い方も考えないといけない。私たちは子どもに、あいさつや食事のマナーは何度も教えるのに、SNSについては教えることを放棄してしまう。SNSでも、やって良いこと・悪いことを教えるのは、つながり合う時代の子育てにおいて、保護者や教育者の義務の一つではないかと感じました。

――田口一成著『9割の社会問題はビジネスで解決できる』を選んだ理由は何ですか。

前田 冒頭で話した通り、社会問題への関心が高まる中、それに応える一冊だからです。行き過ぎた資本主義が批判的に語られる場面が増えた半面、ビジネスによって社会的な問題や課題を解決するという考え方に注目が集まっています。本書の著者は、世界15カ国で40のソーシャルビジネスを展開するボーダレス・ジャパン(東京・新宿)の社長。社会課題をビジネスで解決する方法を追求してきた方です。その知見を現場の目線でまとめている。いまの若い世代は仕事のやりがいや働く理由、目的を重視する傾向にありますが、そうした世代にも「刺さる」と思います。

安藤 社会課題の解決に取り組んでいる企業は応援したくなりますよね。尾原和啓著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』も、そうした企業の背景や、製品を生み出すまでの過程(プロセス)の重要性を扱っています。「プロセスエコノミー」とは、アウトプット(製品)だけでなく、製品がどう生まれたかの過程、ストーリーに価値を見いだしていく消費行動、それに応じた経済活動のこと。本書はこの最新の潮流を、「こんまり」の愛称で知られ片付け術で定評のある近藤麻理恵さんや、K―POPを代表する人気の韓国アイドルグループBTS(防弾少年団)などホットな事例を交えて語っています。消費者の関心は商品やサービスが「どうやって作られたのか」「なぜ作られたのか」「どう自分が関われるか」に向かっており、もはや「良いものを作っていれば売れる」という職人気質ではダメなんだな……と考えさせられました。

一方で、プロセスエコノミーには罠(わな)もあります。共有するプロセスの見せ方だけがうまくなり、成果はなおざりに。そんな風潮が生まれ始めていることに、本書も警鐘を鳴らしています。

――SFの想像力で社会やビジネスを発想しようと説くユニークな書籍も選書に上がっています。

前田 宮本道人、難波優輝、大澤博隆の3氏が編著を務める『SFプロトタイピング』ですね。次のビジネストレンドの兆しをキャッチできる一冊です。これは、即効性のあるスキル本ではない。ただ、将来が見通しにくく、予測しても外れてしまうこの時代に、未来を長期的に考える際に参考になると思います。SFの力を借りて思考を発散させ、空飛ぶクルマといった製品だけではなく、新しい概念や価値を生んだり、社会や制度の設計を考える際の倫理的な課題について考えを深めたりできる。自由な発想で議論すれば、組織の活性化にも役立つといいます。

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「マイノリティー」を社会に生かす