「一家に一球バスケットボール」が理想
「ところが起業してすぐに新型コロナが広がってしまい、イベントの参加者と対面することができない。そこで頭を切り替えてオンラインにしたのですが、それでも自分が届けられる影響力はあるな、と実感しました。これから対面が可能になったら、バスケをするかしないかは別として、触れ合うことが、誰かの人生の転機や活力になれば、うれしいなって思います」
さまざまな逆境にも立ち向かう強さは、小学生時代に通った空手道場で身につけた。
「空手では、精神力が一番鍛えられました。道場のスローガンが『苦しい時こそ一歩前へ』。私がやっていた空手は打撃で、パンチを当てたり、蹴りを顔に当てたりしていくもので、負けそうな時や追い込まれた時に下がってしまうと、相手にやられてしまいます。そういう状況でも一歩前に出る、それが常に掲げられていた教えで、そういう精神が今でも身についていると強く感じています。苦しい時こそ下がるな。一歩か、半歩でもいい、挑戦しようっていう気になります。バスケで踏ん張らないといけない時間帯に、こういう時こそ自分がチームを引っ張っていかないといけない、と奮い立つ。そういう精神力は空手道場で身についたと思っています」

アスリートと経営者の共通点は、と問うと、すぐに「挑戦」と返ってきた。
「バスケでも会社でも大事なのは、挑戦することです。バスケではこんなプレーをしたいという向上心が常に必要で、いろんなプレーに挑戦して、できることを増やしていきます。会社でもそう。自分がやりたいことがあったら、周囲からネガティブなことを言われても、リスクヘッジはしながら挑戦しないと、前に進んで行きません。うまくいけばさらによくしていく、ダメだったとしても経験として次に生かしていけば、そのチャレンジは絶対に無駄ではない」
「五輪でたくさんの方にバスケを知ってもらえました。これからもっと普及させたいです。理想は、一家に一球バスケットボールがあること。身近にボールがあることでバスケを始める子供が増えると考えているので、ボールを寄付する活動や遊び感覚でできるゴールを作っていきたいと思っています」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)
=この項おわり