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マサチューセッツ工科大学教授 アビジット・V・バナジー氏 © Bryce Vickmark

マサチューセッツ工科大学教授 アビジット・V・バナジー氏 © Bryce Vickmark

2019年、「世界的な貧困を削減するための実験的なアプローチ」が評価され、ノーベル経済学賞を受賞したアビジット・V・バナジー米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。パンデミック(世界的流行)による経済停滞からの脱却を目指す政策課題にも大きな関心を寄せる。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるインタビューの後編では、社会的弱者の救済策などについて考えを聞いた。

一律給付、発展途上国では有効

佐藤 日本では岸田内閣が55兆7000億円規模の経済政策を打ち出していますが、その中の目玉政策である「18歳以下の子供に1人10万円相当の給付を行う政策」をめぐって議論が続いています。焦点となっているのは「所得制限を設けるのか」「一部クーポンにして使い道を限定するのか」など、いずれも条件付けに関わる問題です。「一律現金給付」と「条件付き給付」をくらべると、どちらがより財源を有効に使えると考えますか。

バナジー 日本の個別の政策については詳しい情報を把握していないので、一般的な「ユニバーサル・ベーシックインカム」(政府がすべての国民に対して一定の現金を定期的に支給する政策)についての私の考えをお話ししましょう。一時的な景気刺激策として、ユニバーサル・ベーシックインカムを実施することに全く異論はありません。国によっては短期的な経済刺激効果として有効に働くでしょう。

私は発展途上国においては、条件付き給付よりも、ユニバーサル・ベーシックインカムが最も有効な施策であると思います。なぜなら、これらの国々では政府の情報システムが整備されておらず、誰が給付を必要としているのかを判別することが困難だからです。

一方、米国や日本のような経済大国でユニバーサル・ベーシックインカムを実施することについては支持していません。先進国では雇用情報、納税情報などが管理されていて、誰が給付を必要としているのかを判別することができます。

先進国で一律給付をすれば、必要としていない富裕層などにも給付することになります。富裕層などに支給する給付金を、必要としている人々に集中して支給すれば、より財源を有効に使うことができます。先進国において最も重要なのは社会的弱者を救うことです。

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