設問による多様性
内閣府の調べでは、海外の場合、例えばイングランドの国勢調査は出生時の性別のほか、性的指向と性自認について尋ねている。ニュージーランドは2023年実施予定の国勢調査で、従来のsex情報に加え、genderと性的特徴のバリエーションに関する情報を収集。性的少数者についてよりよい意思決定ができることを目指すという。
第5次男女共同参画基本計画の用語解説によればsex(セックス)は生まれついての生物学的性別、gender(ジェンダー)は社会的・文化的に形成された性別を意味する。

日本では20年に調査会社のインテージが多様性に配慮した性別の設問について(1)男性/女性(2)男性/女性/その他(3)出生時の性別/現在は同じかどうか(4)性的指向を含めたLGBTQ――など、の4案で検討。出生時の性と性自認が一致し、異なる性を好きになる「性的マジョリティー層」と、それ以外の「性的マイノリティー層」とに対してアンケート調査をした。
4案のうち「わかりやすい」「自分の性別を的確に表せていると思う」ものをそれぞれ選んでもらったところ、両方の層でわかりやすさも的確さも(3)が一番多かった。同社は今も検討を続けているという。
ワーキング・グループでは今回、男女以外のデータを取得する場合の適切な質問項目や選択肢を示すには至らなかった。白波瀬教授は「海外は10年程度の議論を経て見直しに動いている。日本もこれを第一歩にしてほしい」と話す。
■「性別欄廃止」に落とし穴――丁寧な説明で解決へ
研究開発の分野では、性差に着目する「ジェンダード・イノベーション」が広がっている。生物学的な性別(セックス)や社会的な性別(ジェンダー)による違いを分析し、研究開発に組み入れることで質の高い研究や技術革新を目指す考え方だ。欧米で先行しており、性差に限らず民族や肌の色の違いにも着目している。目指すのは「誰にとっても暮らしやすい社会作り」だ。
調査に関して多様性への配慮は必要だが、必要な情報が入手できなければ問題把握が難しくなる。調査は質問者と回答者との信頼関係によって成り立つ。丁寧な説明で理解と協力を得て課題の解決につなげたい。
(編集委員 中村奈都子)
研究開発の分野では、性差に着目する「ジェンダード・イノベーション」が広がっている。生物学的な性別(セックス)や社会的な性別(ジェンダー)による違いを分析し、研究開発に組み入れることで質の高い研究や技術革新を目指す考え方だ。欧米で先行しており、性差に限らず民族や肌の色の違いにも着目している。目指すのは「誰にとっても暮らしやすい社会作り」だ。
調査に関して多様性への配慮は必要だが、必要な情報が入手できなければ問題把握が難しくなる。調査は質問者と回答者との信頼関係によって成り立つ。丁寧な説明で理解と協力を得て課題の解決につなげたい。
(編集委員 中村奈都子)
[日本経済新聞朝刊2022年11月21日付]