――ピンクはお好きな色なのですか。

「シャツだけじゃないよ。ほうら、今日はいている靴下はショッキングピンクでしょ。セーターもピンクと赤、靴下も赤とピンクだけと決めています。これだけ鮮やかな色の靴下はなかなか見かけませんが、周りが見つけてはプレゼントしてくれるようになりました」

靴下は赤かピンクと決めている。シャツと同じく、笹川さんのトレードマークだ。靴は30年はいているもの

母の教え 「洋服は自分のために着るものではない」

「ピンクや赤を身につけるのはなぜかというと、外国で年を重ねた女性が赤を着るのにならって、自分も明るい色を着ようと思っているからです。もうじき83歳になるのですが、いつも、年寄りくさくならないためにはどうしたらいいかを考えています。僕は子供の時に母から『洋服は自分のために着るものではありません。人様に不愉快な思いをさせないような服装をしなさい』としつけられました。戦前ですから貧しくて破れたところを繕った服も着ていましたけど、清潔なものを着る、人から見てきちんとした格好をすることが身についていたんです。同じ世代の周りの人を見て、年齢相応に年寄りくさい、というのは当たり前の話。ただ、僕はいつもたくさんの人にお会いする。だから相手のことを考えないといけない」

――社会貢献活動をはじめ毎日たくさんの人に会うからこそのこだわりですね。

「いえ、不快感を与えないということに尽きる。こだわる、なんてないんです。そもそも僕は買い物もしない、外食もしない。妻もまったく同じです。服はほぼすべて妻が買うのですが、それも通販がほとんど。店で買うのは三越のこのシャツくらいです。これは妻について来てもらって、買いに行く」

――時計などの小物はどうですか。

「30年以上腕時計を持ったことがありません。何百万円もする時計をしている方や、趣味で時計を集めている方を否定はしませんが、僕は時計に興味を持てないなあ。時計はしない方が時間の正確さが身につくと思っています。背広に何十万円もかけるビジネスマンもたくさんいますけど、これも分からない。僕は物欲がない。ぜいたくをしたいとも思いません」

――それでは、品格のある身だしなみとは何だとお考えですか。

「それは姿勢ですね。毎朝起きるとまず妻に5分間、壁の前に立たされて、姿勢を正す訓練をするんです。『おなか引っ込めて』とか『肩を後ろに』とか言われて、姿勢チェックをするんですね。年をとるとだんだん首が前に出てしまう。姿勢が見た目を台無しにしてしまうから、とにかく気をつけています。それに毎日、40分間ストレッチをしています。腕立て伏せは朝100回やっているんです。海外で脂っこいものを多く食べて体重が増えたら、すぐに減量しますし」

仕事の装いではだらしなく見えないよういつも意識する。「男も女も襟元が大事。ここがきちんとしていること」。シャツの襟も完璧だ
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