運動療法をサポートする薬物療法
こうした治療の流れのなかで齋田特任教授が重視するのは「運動療法」。太ももの大腿四頭筋など膝関節をサポートする筋肉をしっかり鍛えることです。「薬などで痛みをとることは重要だが、より大切なのは医師と相談しながら運動療法をしっかり続け、歩く力を衰えさせないようにすること」だと言います。一度すり減った軟骨が運動により戻るわけではありませんが、関節をサポートするための筋肉を鍛えるとともに、膝周囲の組織の柔軟性を高めることで、関節の負荷を減らし、痛みを軽減できる可能性があるほか、炎症を抑えて骨の変形を食い止める効果も期待できます。
運動療法の例

医療機関では通常、痛みを改善し運動療法をサポートするため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる鎮痛薬(成分名でフェルビナク、ロキソプロフェン、インドメタシンなど)を含んだ「飲み薬」「貼り薬」「塗り薬」による治療が行われます。
薬物療法で効果が不十分な場合に行われる注射療法
これらの薬物療法で効果が不十分な場合、次に行われるのが「注射療法」です。非常に痛みが強いときに一時的に行われる「ステロイド注射」のほか、継続して受けられる治療として広く行われているのが「ヒアルロン酸の関節内注射」。また、変形性膝関節症の新たな注射療法として広まりつつあるのが「多血小板血漿(PRP)療法」です。
PRP治療は、患者から採取した血液を遠心分離し血小板の多い部分を抽出。血液中の血小板などが持つ組織修復の力を利用する治療法で、これまで整形外科、歯科などさまざまな診療科で利用されてきました。有効性や安全性に対する研究も進んでいるため、糖尿病性潰瘍、床ずれなど皮膚の難治性潰瘍については2020年4月に公的医療保険での治療が認められています(PRP療法の詳細は「変形性膝関節症の『PRP療法』、早期治療で効果得やすい 課題は費用」をご覧ください)。
[日経Gooday2022年7月4日付記事を再構成]