「嫌い」を「好き」にするには「繰り返しの刺激」が必要

だれにでも苦手な人はいるもの。しかし、脳からのアプローチで「嫌い」を「好き」にひっくり返すことができるなら、試してみてもいいかもしれない(写真はイメージ=123RF)

――好みは操作できるのですね。では、その仕組みを使って、私たちができる「嫌いのコントロール法」はあるのでしょうか。

篠原さん 嫌な人と一緒にいたけど観た映画が面白かった、あるいは、嫌な相手だけれど、行ったレストランが大当たりでおいしかったら、まあまあ好きになるかもしれません。打ち合わせをするときにすごくおいしいケーキを食べながらやってみるのはどうでしょう。

――やってみる価値はありそうです。自分だけでできることはありますか?

篠原さん 同じ状態を自分の中で作ることもできます。

以前の記事「脳をダマして緊張を克服 不安を『外在化』する方法」でお伝えした、緊張でドキドキしているときの「外在化」もそう。ヘタレキャラに自分を乗せて「死ぬ死ぬ死ぬ、プレゼン怖い!」と大げさにビビるということや、心臓がドキドキしているときに「私は興奮している…」と言い換えるのも、「嫌い」を「好き」に変えるひっくり返しのテクニックです。

――苦手な相手と会う前にドキドキし始めたら「私は興奮している…」と思ってみるのですね。確かに、マイナス一色、嫌な気持ち以外浮かばない! という状態からは脱せそうです。

篠原さん 一つ大切なことを言うと、マイナスをプラスにひっくり返すことよりも、プラスをマイナスにひっくり返すほうが簡単である、という現実があります。大好きなレストランだったのに、ある日、料理にへんな虫が入っていたら、「二度と行かない!」となります。好きから嫌いは、いとも簡単なのです。

一方で「苦手な人を好き」にひっくり返すのは難しいので、プラスの経験をこまめに積むよう工夫すること。嫌だ嫌だと思いながら接しないことです。

記憶の保管庫である海馬はどんなときにその記憶を刻みやすいかというと、1つめは、すごく強い感情刺激があったとき。2つめは、何度も繰り返し刺激を受けたときです。ですから、「嫌い」と思った気持ちが強い場合は、それを凌駕(りょうが)するぐらい、繰り返し、いろんな方法で刺激を送ればいい、つまりトレーニングをすることが大切です。

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次回は、もつれた人間関係をほどくための意外な発想の切り替え法について聞きます。

(ライター 柳本 操)

篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。

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