「外部のこと」を話そう

「わたしのことではなく、あなたのことでもなく、『外部のこと』を話そう」。第1章「なにを話すか」の結論めいたことはこの一言に尽きる。こんな調子で第2章「どう話すか(とっかかり編)」、第3章「どう話すか(めくるめく編)」、第4章「だれと話すか」と続き、最後の5章では「なぜわたしたちは、会って話をするのか?」を考える。

「『関係ありそうな、なさそうなこと』を話そう」「他人にツッコむのはやめよう」「会話にオチはいらない」……。会話術っぽい記述もそこここに出てくるが、会話の意義を考えたときに導かれる注意点のような感じだ。章と章の間には編集者との対話を織り込み、ときに冗談をまぶしながら、著者は「会って、話すこと」をめぐってあれこれ考え、ゆるっと考えを深めていく。その思考のあやを楽しみ、第5波が収束して少しは会って話せるようになるこれからに向けて心の準備をする。そんな読み方が似合う本だ。

「入荷してからずっと1位が続いている。前著の人気を引き継いでいるのと、会って話すというテーマが読者に響いている感じがする」と同書店でビジネス書を担当する本田翔也さんは話す。著者が選んだ本とともに本書を並べた特設の平台を設置しており、来店客の目を引いている。

5冊中3冊が春先刊行の本

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)会って、話すこと。田中泰延著(ダイヤモンド社)
(2)実力も運のうち 能力主義は正義か?マイケル・サンデル著(早川書房)
(3)広告がなくなる日牧野圭太著(クロスメディア・パブリッシング)
(4)今さら聞けない投資の超基本泉美智子著(朝日新聞出版)
(5)企画 「いい企画」なんて存在しない高瀬敦也著

(青山ブックセンター本店、2021年10月11~17日)

今回紹介した『会って、話すこと』が先週も1位だった。2、3、4位には、白熱教室で人気のあるサンデル教授の最新刊、広告のこれからを考察した本、投資の入門書と多様な本が並ぶが、いずれも春先に刊行されたものだ。5位は本欄の記事「企画とは決めること ヒットメーカーが語る仕事の本質」で8月に紹介した企画と企画力について考える本。こちらも息が長い売れ筋になっている。3位の広告本と5位の企画の本は前回7月に同書店を訪れたときもベスト5に入っており、新刊への反応が鈍ったままの状況が見て取れる。

(水柿武志)

会って、話すこと。 自分のことはしゃべらない。相手のことも聞き出さない。人生が変わるシンプルな会話術

著者 : 田中泰延
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 1,650 円(税込み)