会って話す意義をゆるっと考察 コロナ後へ助走促す本青山ブックセンター本店

特設の平台に前著や著者が選書した本とともに展示する(青山ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に1度訪れている準定点観測書店の青山ブックセンター本店だ。緊急事態宣言の解除から半月あまりが過ぎ、ここ青山でも土日の人出はだいぶ戻ってきているという。それでも平日は戻りが鈍く、ビジネス書の売り上げ回復にはまだ時間がかかりそうだ。そんな中、書店員が注目するのはコピーライター・CMプランナーからウェブを舞台にした執筆家へと転身した著者による会話術の本だった。

会えない現実、なぜ嘆くのか

その本は田中泰延『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)。田中氏は2016年に電通を退社後、「青年失業家」を称して、インターネット上で執筆活動を始めた執筆家。映画評コラムなどで人気執筆者となり、19年には文章術の本『読みたいことを、書けばいい。』がベストセラーになった。テーマを書くことから話すことに変えて世に問うた2冊目のビジネス書が本書だ。

著者はまずなぜ話し方の本を書いたかというところから書き始める。書き方の本の続編を構想していたところに新型コロナウイルスの感染拡大が起こった。人が人と会うことが困難になり、顔をつきあわせて話す機会が激減した。人と会えない現実を我々はなぜ嘆くのだろう。そこで「あらためて会話することの意義と、臨み方、考え方を問い直す本をつくりたいと思った」と著者は書く。

だからこの本は会話術の本というより、会話することの意義を考える本だ。そのせいか、この本は多くの会話術の本とは反対のことがたくさん書いてある。第1章をめくると、「相手はあなたに興味はない」「あなたも相手に興味はない」。こんなことがそれぞれ1ページ使って大書してある。「『わたしの話を聞いてもらわなければならない』『相手の話を聞かなければならない』/最初に、その2つを捨てたら楽になる」。そんなことが書いてある。

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