Z世代の旗手、藤井聡太四冠 伊藤忠元会長が強さ分析

藤井四冠は1月から王将戦七番勝負にも挑む

将棋界で藤井聡太四冠(竜王、王位、叡王、棋聖)の快進撃が止まらない。1月9日からは渡辺明三冠(名人、棋王、王将)に挑戦する王将戦七番勝負がスタートする。四冠対三冠の頂上決戦だ。伊藤忠商事の社長や会長を歴任し、駐中国大使も務めた丹羽宇一郎・伊藤忠名誉理事(日本中国友好協会会長)は、3年前から藤井四冠との交流を重ねてきた。間近に観察したZ世代(1990年代後半以降に生まれた世代)の旗手、藤井四冠の本音を聞いた。

――藤井四冠は19歳です。今夏の対談集「考えて、考えて、考える」(講談社)で、82歳の丹羽さんは藤井四冠を「63歳年齢の離れた最も若い友人」と呼んでいます。

「最初に会ったのは2018年で、まだ藤井さんが16歳の時でした。純粋で打てば響くような頭脳の働きをみせる一方、話していてビクともしない落ち着きを感じました。沈着冷静な態度は人知れず努力している裏付けがあるからでしょう。将棋界の第一人者となった現在も、この印象は全く変わりません」

努力の天才 「忘我の境地」で将棋と接する

――藤井四冠の才能は将棋史上でも1、2を争うものではないかとプロ棋士から評価されています。

「人間には生まれながらの『天才』はいないと考えます。一方で『努力する天才』は確実に存在します。普通ではできないような何倍もの努力ができる人物を天才と呼ぶのでしょう。藤井さんは努力するときの集中力が優れているのです」

「誰でも2時間も精魂込めて考えれば疲れてしまいます。しかし、夢中に取り組んでいる時は疲れを感じません。藤井さんは毎日、ノルマを決めているのではなく、『忘我の境地』で将棋と接しているのでしょう。私は常々、『人間死ぬまで勉強』と言っていますが、藤井さんは『死んでも将棋』くらい努力している印象です」

――対談を通じ、藤井四冠の中の3つの資質を発見したそうですね。若いビジネスパーソンの参考になりそうです。

「自分が長年、経営者を務めてきた中で考えた『トップの3条件』を藤井さんも心していることに気づきました。第1は負けず嫌いです。自分に厳しく、こことここの点で悔しいと反省することが次の勝利への力になるのです。藤井さんは自分でも『負けず嫌い』を公言しています。少年のころに谷川浩司九段と指導将棋を指してもらい、優勢の谷川さんが引き分けにしようかと助け舟を出しても、号泣して拒んだエピソードは知られています。負けず嫌いということは最後の最後まで諦めないことです」

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対局は決断の連続 自分の読みを信じ切る精神力
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