2022/6/23

若い男性の意識変化 育児に関する男女差縮まる 

――大手企業での研修などを通じて、若い男性の意識の変化を感じていらっしゃるそうですね。

山口 私が手掛ける育休取得者向けの研修では、企業側にお願いして、その企業の育休取得経験者の方に2人か3人くらい、パネルディスカッションなどで経験を話してもらっています。2、3年前から、先端的な企業では登壇者のうちの1人は男性という風になってきました。聞き手側も男性が増えつつあります。

山口さんは若い男性たちの意識の変化を感じている

つい最近、ある企業で研修をさせていただいたときのことです。パネリストへの質問で、育休を取得した男性社員の方が「自分は子育てが本当に楽しくて、仕事に戻るのがつらくなっちゃったんです」という風に尋ねられたのです。これに対して、パネリストの男性の方は「自分も同じだけれど、仕事をすることも家庭を支えるうえで大事だから、やっていくようにしています」と。こんな質疑は初めてです。

従来もお子さん好きなパパたちには研修でたくさんお会いしました。けれど、「子どもがかわいくなっちゃって……」と素直に質問したような方はいなくて。

これは、その場の心理的安全性が保たれていたことでもありますし、「そういうことを職場の研修で聞いても大丈夫」という感覚を持てる人が出てきた。新鮮でしたし、すごいと思いました。「ここまできたんだ」と感慨深かったですね。

冒頭申し上げた、厚労省の「雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は20年度で12.65%です。「ようやく1割を超えた」との見方も成立しますが、96年度はわずか0.12%でした。それが08年度は1.23%になり、20年度は12.65%に。比率の比較ではありますが、10倍、10倍で20年度は96年度の100倍に達した訳です。これはとても大きい変化だと思っています。

「自分も育児を一緒にやりたい」と考える層が本当に増えています。民間調査でも、来春入社予定の男子学生の約6割が子どもができたら育休を取得したいと答えていて、この割合は女子も6割台後半でした。かつては同じ質問に対し、男女で40ポイントも回答割合の差が開いていました。いまは10ポイント足らずです。「子どもがかわいい」という気持ちはパパもママも同じ。男女の差はどんどん縮まってきています。

「自分はどうしたいか」 育休復帰後の面談でもカギに

――男女差が縮まれば、夫婦のキャリア形成が変わっていく可能性もありそうですね。

山口 そうですね。私の場合、大学の研究室で知り合った同じ年のパートナー(夫)と勤め先こそ違いますが、子どもが生まれるまでは同じような給料で同じように残業して……という状況でした。

しかし、夫のキャリア曲線は育児の影響が少なかったのに対し、私は2人の子どもの出産や育休で一時期、ストンと落ちて、底ばいに。そこから再浮上しましたが、会社員時代、思ったようなキャリア曲線が描けなかったように思います。

けれど、男女差が解消されつつある、これからのカップルならば、お二人で私たち夫婦の間の曲線を目指すようなワークスタイルもあるのではないでしょうか。

新しい自分たちのライフスタイルを目指していくうえでも、働く女性の皆さんには「自分はどうしたいか」をきちんと見つめていただきたいと思っています。というのも、実はご自身が思っている以上に「べき論」に陥りがちだからです。

「本当は自分もバリバリ残業したい」と思っているのに言い出せなかったり、家事分担などを話し合えなかったりということが意外に多くみられます。自分の本心を見つめないままでは、どこかで絶対、不満がくすぶって問題が生じます。

「あなたはどうしたいですか」は育休復帰後の面談で、どこまで仕事ができるか上司と話し合うときにも聞かれることです。話し合わなければ、分からないこともたくさんあります。想像より上司や周囲がサポートをしてくれることもあります。

私が天職だと思う、いまの仕事を始めたのは49歳になってからのこと。子どもは16歳と14歳でした。ぜひ、キャリアを長期で考えることと同時に、ご自身の本心をみつめることを忘れないでください。

(聞き手は佐々木玲子)