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薬と好ましい生活習慣で、死亡やがんのリスクが7割減

分析に影響を及ぼす可能性のある要因として、年齢、性別、学歴、飲酒習慣、高血圧の罹病期間、糖尿病または心血管疾患の有無、脂質降下薬(コレステロールや中性脂肪を下げる薬)の使用などに関する情報も得て、それらを考慮した上で分析しました。

最終的な分析対象は、登録時点でがんではなく、必要な情報がそろっていた高血圧患者1万4392人(平均年齢65.6歳、50.6%が男性)になりました。追跡期間の中央値は7.3年で、その間に2015人が死亡していました。761人が心血管疾患、525人ががんによる死亡でした。

降圧薬の使用と生活習慣の組み合わせが、総死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、がんによる死亡リスクに及ぼす影響に関する分析では、降圧薬を使用しておらず、生活習慣も好ましくなかった(スコア0~4)人たちを参照群としました。このグループと比べて、最もリスクが低かったのは、降圧薬を使用しており、かつ好ましい生活習慣(スコア8~10)を持続していたグループで、約7割の減少が見られました(表1)。一方で、降圧薬を使用しつつも生活習慣は好ましくなかったグループでは、参照群に比べて心血管疾患による死亡リスクとがんによる死亡リスクに有意な低下は見られませんでした。

表1 降圧薬の使用と生活習慣が死亡リスクに及ぼす影響

(データ出典:JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146118.)

生活習慣スコアを横軸に、死亡リスクの低下幅を縦軸にして、グラフを作成すると、降圧薬を使用していた集団と使用していなかった集団の両方において、生活習慣スコアが上昇するほど、総死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、がん死亡リスクが低下することが明らかになりました。

著者らは、経時的な生活習慣の変化が死亡リスクに及ぼす影響についても検討しました。対象は、Dongfeng-Tongjiコホートに参加した時点と2013年の両方で評価を完了していた6863人です。その結果、当初は好ましくない生活習慣だった人が、その後、中間または好ましい生活習慣に分類されるスコアまで生活改善を行うと、それ以降の総死亡と心血管疾患による死亡のリスクは50%近く低下することが示されました(表2)。

表2 生活習慣の変化と死亡リスク

(データ出典:JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146118.)

適正な体重を維持し、喫煙せず、推奨されているレベルの運動を行い、健康的な食事をとり、適度な睡眠をる、という好ましい生活習慣を継続しつつ、降圧薬を服用する。これが、高血圧の成人患者の早すぎる死の予防に役立つことが、今回の研究で明らかになりました。死亡リスクを下げるためには、降圧薬の使用だけでは不十分で、長期にわたって好ましい生活習慣を持続することが重要であると言えそうです。

[日経Gooday2022年5月2日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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