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写真はイメージ=PIXTA

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欧米の先進IT企業を中心に経済学の知見をビジネスに生かそうという動きが広まっている。DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まる中、その動きはIT業界にとどまるものではない。経済学の社会実装というミッションを掲げて事業展開するエコノミクスデザイン(東京・新宿)の代表取締役、今井誠氏がその背景や具体的な実装例、活用に向けた経済学の学び方を解説する。

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エビデンスが意思決定に不可欠なものに

EBPM(根拠ある政策立案)、XAI(説明可能なAI)という言葉をよく聞くようになりました。政策立案において、各政策の決定には、公共データを中心に様々なデータから導き出された何らかのエビデンス(根拠)は不可欠です。あるいはAIでも同様に、「AIが出した答えだから正しい」とされていた時代は終わり、そこに根拠がなければ、その回答も実行に移すかを検討する。そんな時代が訪れています。

各企業の意思決定や様々な提言などにも、今後、エビデンスが不可欠となっていくでしょう。例えば、アマゾン・ドット・コムでは多数の経済学者が雇用されています。購買履歴はもとより様々なデータの蓄積と、経済学者らによるその膨大なデータの分析が行われているのは間違いありません。新たなサービスを提供する場合には、サービスサイトを複数用意し、サイトごとの比較実験などを行っていることも明らかにされています。その結果、つまりエビデンスをもとに、意思決定を行っているのです。

2022年、私は多くのレーティングサービスの提供事業者の方々とお話ししました。レーティングサービスというのは、例えばアマゾンであれば商品を「星の数」で評価する、その仕組みのことです。

残念ながらまだあまり広く知られてはいませんが、実は、このレーティングの設計には、経済学の知見がとても有用です。

ここで、ある2つの商品を想像してみてください。その商品の1つは、全員が「3点」の評価を付けました。全員3点ですから、平均点も「3点」です。一方、もう1つの商品は、半分の人が「1点」をつけ、もう半分の人が「5点」を付けたとします。こちらも平均点は「3点」。この2つの平均点の「3点」は、同じでしょうか? いえ、そうではないはずです。単なる平均点では算出できない実態に即した評価をつけるのは、経済学においては難しいことではありません。

多くの人は、電化製品の選択や食べに行く飲食店の決定の際に、何かしらのレーティングサービスを参照するのではないでしょうか。このような社会情勢もあって、レーティングサービスは、消費者等の意思決定や売り上げに与える影響がますます大きくなっています。公共性を持ったサービスになりつつあるといっても過言ではありません。

こうしたサービスだからこそ、「公正な基準とは何か」を徹底的に突き詰めていくことは不可欠です。

評価者はユーザーか、モニターか? 類似のサービスには、どんなものがあるか? 評点の付け方に傾向はあるか? 一部のアンチや不正に耐えうる設計になっているか? 評価点数の付け方以外にも、検討すべき点は数えきれないほどあります。それらを徹底的に調査し、細部を調整していくこと。その結果、頑健性のあるレーティングサービスになっていくのです。これからのレーティングサービスは、レーティングのプロセスの透明性も含め求められていくと考えています。

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