創業者の岩崎俊彌氏は実業家であり、ロンドンで応用化学を学んだエンジニアでもある。そんな企業の出自も魅力だった。岩崎氏は日本の近代化には国産ガラスが必要と考え、不屈の精神で日本初の板ガラス製造に成功した人物。技術革新に加えてグローバル展開にいち早く着手し、新事業を次々と生み出してきた。そんな創業者のチャレンジ精神を引き継ぐ会社の気風を、平井さんも存分に享受してきた。

ところが2010年に過去最高益を計上し、業績がピークを迎えてからは「管理主義、前例主義、減点主義がはびこって、チャレンジ精神が失われそうになっていた」。そして11年、一つの事業に頼らない事業ポートフォリオへの転換が急務となるなか、当時の社長が平井さんにこう命じた。「次の会社の柱をつくってくれ」。文字通り、ガラス関連以外の新事業を生み出すための新組織「事業開拓室」(現事業開拓部)を託された。
イノベーションへ 社員の挑戦鼓舞
当時、社内では「失敗すると責められる、と社員が萎縮し、新しいことに挑む雰囲気が乏しかった」。そんな空気を変えようと社員を鼓舞し、電子、化学品、セラミックスなど様々な素材のイノベーションに取り組んだ。素材産業の新事業は、花開くまでに10年や20年かかるのも珍しくはない。だが新組織は着実に成果を生み出した。「過去に種まきした事業を引き継ぎ、100億円以上の規模に成長させたものが5つ以上。バイオ医薬やカメラ用のブルーフィルターなど、この10年ほどで爆発的に伸びたものもあります」。今や事業ポートフォリオは劇的に変わり、社員の意識も大きく変わったと感じている。

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