羽ばたくミカドバト(Ducula aenea)。インドのアフマダーバードにあるカマラ・ネルー動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)駐車中の車を汚したり、歩道の食べかすに群がったりするハトを嫌う人は多い。しかし世界には300種類以上の野生のハトがいて、その多くが驚くほど美しい。
「ハトはすばらしい生きものです」と語るのは、『ハト・ウオッチングのためのポケットガイド(A Pocket Guide to Pigeon Watching)』の著者、ローズマリー・モスコ氏だ。
「ハトは子どものためにミルクを作り、ほぼ垂直に飛び立てます。私たちには見えない色が見えて、聞けない音が聞こえ、まだよくわかっていない方法を使って数百キロメートルという距離を迷わず移動します。ハトは世界で一番、過小評価されている鳥なのです」
中央アフリカから中東地域の一部にかけた狭い地域に生息するキバラアオバト(Treron waalia)。好物はイチジク。ジョエル・サートレイ氏が米テキサス州にあるヒューストン動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
熱帯インドネシア原産のメジロミカドバト(Ducula perspicillata)。学名に含まれるperspicillataはメガネという意味だ。米ヒューストン動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)世界中の街で見かけるハトは、はるか昔に人が飼いならしたカワラバトの子孫だ。
食料として、通信手段として
6万7000年前ごろから、ネアンデルタール人やそれ以降の人類が安定した食料源として野生のハトを食べていた証拠もある。それよりもよく知られているのは、ハトはさまざまな文明で貴重な長距離通信手段として使われていたことだろう。古代ローマ人も、モンゴル帝国の初代皇帝チンギス・ハーンも伝書バトを活用していた。
オーストラリアの乾燥した草原や森林に生息するライチョウバト(Geophaps scripta)。オーストラリアのメルボルン動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
フィリピンアオバト(Treron axillaris)。フィリピンのアビロン動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
赤い目をしたニューギニア原産のアカメミカドバト(Ducula pinon)。シンガポールのジュロン・バードパークで撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
ニュージーランドバト(Hemiphaga novaeseelandiae)、またの名をケレルは先住民マオリ族に尊重されている。ニュージーランドのオークランド動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
マダガスカルやコモロ、モザンビーク沖のフランス領マヨットに生息するマダガスカルアオバト(Treron australis)。鮮やかなオリーブグリーン色をしている。米サウスカロライナ州のリバーバンクス動植物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
飛行士のゴーグルのような丸い模様が特徴のアオメバト(Patagioenas corensis)。コロンビア、ベネズエラ、オランダ領アンティル付近の原産だが、食料目的で乱獲されている。コロンビア国立鳥類園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
絶滅したドードーにもっとも近い現存種のミノバト(Caloenas nicobarica)。インドのアンダマン諸島やニコバル諸島から、マレー諸島、ソロモン諸島、パラオにかけて生息する。国際自然保護連合(IUCN)によって近危急種(near threatened)に指定されている。米ネブラスカ州オマハにあるヘンリー・ドーリー動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)