服装は「どんなブランドでありたいか」を映す

――成功に結びついたマーケティングのポイントは何でしたか。

「スタートアップって最初はうまくいかず、あるとき垂直にばーんと伸びるんです。成功要因は2つ。1つは戦略を逆張りにしたこと。敏感肌用なんだけど、真っ赤っかな、攻撃的なボトルにしたんです。お客様インタビューで分かったのが、敏感肌用の化粧品はすべてが地味でそれに満足していないということ。『私だって華やかできらきらした高級化粧品を百貨店で買いたいの!』という声をたくさんお聞きして」

現在はオフィス3割、在宅勤務3割、オフィス以外でのリモートが3割という。「でもコロナ前後でも服装は変わっていませんよ」。アクティブな装いを好む

――わかります。素っ気ないデザインだと、気持ちがアガらない……。

「そう。敏感肌用化粧品は医薬品っぽいたたずまいが良い、というのはメーカーの典型的な固定観念だったんです。ポーラの技術もあるし、パッケージも真っ赤にしてビューティーを意識して作ったら、すごく支持をいただいた。ディセンシアのキャッチコピーは『敏感肌は、もっと美しくなれる』というものでした」

――チャレンジャーですね。反対はありましたか。

「やっぱりポーラグループの研究生産部門にはやめたほうがいいと反対されまして、ああ、ちょうどいいな、と。僕は、メーカー視点で否定されないとダメだ、と思っていましたから」

「もう一つの成功要因はデジタルを使ったコンテンツマーケティングに力を入れたことでした。サイトを作り、物を売る広告ではなくて、スキンケア大学という医師の考え方やお肌の悩みに対するアドバイスなどを網羅したコンテンツを展開したんです。そのコンテンツに着地した人をリターゲティングして追いかけていく。IT人材を集めて最初からデジタルマーケティングの技術を入れてやったのがはまりました」

――ポーラといえば元は訪問販売の会社で、ECやデジタルで成功したというのは相当なインパクトを与えたことでしょう。さらにオルビスの社長に抜てきされました。

「最初はひっくり返りましたよね。40歳でオルビスの社長をやるという重責よりも、30代のすべてをかけて打ち込んだディセンシアを離れなきゃいけないということのほうが衝撃でした。ディセンシアは僕の中では自分の会社だったんです。寝袋を置いて仕事をしていたような感じだったので」

――オルビスに来たらカルチャーが違いましたか。服装も変わったわけですね。

「僕からすると、ベンチャーの時のカジュアルとは違って、オルビスのブランドのトップであることをすごく意識してこういう服装になったんですけど。もともとオルビスには服装規定がありました。必ずジャケットを着ていなければならないとか、襟が付いていること、などと明文化されていた。そこで僕は、そんな規定は必要ないよ、と廃止してしまいました。ダイバーシティーの時代だからみんなTシャツでやろう、という話ではなくて、そのブランドがどういうブランドでありたいのか、どういうお客様に支持されたいのか、という気構えを反映した服装であることが大事なんだと。それが僕の考え方なんです」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


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