(1)休暇の1カ月前にアナウンス

チームの1人が有休を取得することをチームメンバーが知ったのは取得の前日だった、ということはありませんか。これでは、周囲から不満を持たれても仕方ない面があります。

当人は「上司にはもっと前に伝えたのに」と思っているかもしれません。しかし上司だけでなく一緒に仕事をしているメンバーにも、自分から早めに伝えておきましょう。

可能なら1カ月前、それが無理でもできるだけ早く伝えましょう。長期休暇ならばなおさら早めに言う必要があります。気持ちよく休むには、周囲への丁寧な告知が大切です。「有休が取りにくい」と嘆く人は、チーム内へのアナウンスが上手にできていないケースがあるのです。

チーム内だけでなく、社内の別チームや取引先へのアナウンスも重要です。自分が休んで仕事が滞る可能性がある相手には、しっかり伝えておきましょう。事前アナウンスをしておくことで、休暇中の電話やメールが減るでしょう。

「取引先が忙しくしているときに休むとは言いづらい」という人もいますが、他社の社員の休暇について気にする人は多くないでしょう。最近では、休みなく働いていたり、遅くまで残業していたりすると相手から心配されることもあるのではないでしょうか。有休の取得についての考え方について、日ごろから相手と確認しておくのもよいでしょう。

(2)休暇前に引き継ぎを実施する

ただの休暇で引き継ぎなんて大げさな、と感じるかもしれませんが、とても重要です。育休など長期にわたって休むときはもちろん、1日だけ休暇を取るときにも効果的です。

休暇を取って家族でレジャーを楽しんでいる最中に、取引先から電話がかかってきた。その電話対応で1時間も費やしてしまい、旅の予定が狂ってしまった――。引き継ぎをしていないと、こんな事態も起こってしまいます。

休暇前には、現在の業務の状態を説明したうえで、自分の休暇中に発生し得る状況を整理し、どんな対応をしてほしいかを伝えます。どうしても自分が対応しなければならない用件がある場合は、その状況も含めて上司や同僚に話し、「休暇明けまで待ってもらうように伝える」など適切な対処法を一緒に検討しましょう。

これは自分だけでなく、同僚が休みやすくするための環境づくりにもつながります。同僚の休暇中にその人の仕事を引き継ぐことで、チームメンバーがどんな仕事をしているか理解でき、自分の能力の範囲が広がることもあります。

(3)対応可能な時間を伝えておく

いくら同僚に引き継ぎをしていても、自分でなければ対応できない状況は起こり得ます。そんなときのために、「対応可能な時間」を前もって伝えておく方法があります。

これは筆者も実践していました。長期休暇で家族旅行に出かけるときなども「毎日午後11時からメールを確認し、返信する」と決めて、取引先や同僚に伝えておくのです。さらにこの文面を、メールの自動返信機能を使って送るようにしていました。

この方法を「わがままだ」と感じる人もいるかもしれませんが、会社員時代にそれでクレームを受けたことはほぼありません。このような連絡をしていても日中に電話がかかってくることはありましたが、筆者の状況を分かったうえでの電話なので、相手もかなり遠慮がちになります。

このように、事前の告知・引き継ぎと休暇中の対応方法の明示で、有休の取得しにくさはある程度解消できます。できることから試してみてください。

天笠 淳(あまがさ・あつし)
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。

[日経 xTECH 2022年10月20日付の記事を再構成]