サイバーで学んだ「傾聴」 発達障害児の可能性伸ばすWoody社長 中里祐次氏(下)

発達障害や不登校の子どもが、自分の好きな分野に詳しい学生や専門家などと1対1でつながり、可能性を伸ばしていく「Branch」というサービスがある。運営元のWoody(東京・渋谷)はサイバーエージェント出身の起業家、中里祐次氏(39)が立ち上げた会社だ。2013年に起業し、電子書籍関連のビジネスやアプリ開発を手がけたものの、鳴かず飛ばずで別の道を模索していた頃、長男が発達障害と診断された。同氏はそれをネガティブにとらえず、発達障害の子が「好きなこと」をとことん突き詰め、それを起点に社会につながれるよう支援するサービスを思いつく。障害をフラットに見つめる視点は、どこから生まれたのか。

仕事をしていなかった父

中里氏は東京・目黒で生まれ育った。

「目黒出身だというと、時々、実家がお金持ちなのかと誤解されるのですが、お金持ちどころか、父は僕が子供の頃、15年くらい仕事をしておらず、不動産屋をしていた祖父と母のパート収入でやっと生活していました。大抵おやつはニンジンで、明らかに貧乏だったのですが、僕は鈍感だったのか、友だちの家と比べてどうこう思うようなことはありませんでした。高校受験で『うちは私立には行かせられない』と言われて初めて、あ、この家にはお金がないんだと気づいたくらいでした」

父はかつて会社員として働いていたものの、「強迫性障害」を理由に辞めていた。中里氏は「今振り返ると、父には多分に発達障害の自閉スペクトラム症(ASD)的な特性もあったように思う」と話す。

発達障害とは生まれつき脳の機能の発達がアンバランスなために、社会生活に困難を抱える障害。文部科学省が2012年に小中学生の15人に1人が該当する可能性があるというデータを発表して以来、社会的な関心が高まった。

行動や認知の特徴によって「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動症(ADHD)」「学習障害(LD)」の3つに分類される。その中で、他人の意図を言葉や表情などから読み取るのが苦手、という特性を持つのがASDだ。他人からどう思われるかを一切気にせず、ある行動を繰り返したり、人と関わること自体に無関心だったりするため、他者との関係構築に困難を抱える。

「父はいつもニコニコしていておとなしく、自分からしゃべる姿はほとんど見たことがありませんでした。その分、母が父の倍以上話す人でした。僕がわりと社交的で、学校や会社の先輩たちからかわいがってもらえたのは、母の影響かもしれません」

Woody社長の中里祐次氏 背景の壁には子供たちの絵が貼られている

発達障害のことに詳しくなった今では、父に対するわだかまりは消えたが、子どもの頃は働かない父が嫌いで、「あんなふうにはなりたくない」と勉強に力を入れた。そのため中学時代の成績は学年でもトップクラスだったが、東京都立青山高校に入ると、遊びや好きな本・漫画に使うお金が欲しくてアルバイトに精を出し、成績は急降下した。

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できる子・できない子、両極端の世界を経験