ウェアラブル活動量計は運動量を増やし、体重を減らす

日経Gooday

日経Gooday(グッデイ)

ウェアラブル活動量計(手首などに装着して歩数や移動距離、心拍数などを計測できる装置)を着けている人は、運動量が増え、体重が緩やかに低下し、血圧も低下する効果が見られることが、複数の研究データを統合した信頼性の高い分析で明らかになりました[注1]

活動量計は本当に健康に利益をもたらすのか?

現代人の多くが運動不足になっています。ウェアラブル活動量計は、低コストで運動不足を解決できるツールだとアピールされており、ユーザーも増加していますが、一部にはその有効性を疑う声もあります。例えば、精度の低い製品が存在するという報告があったり、活動量計の使用が強迫行動を促したり、摂食障害の患者を増やす可能性があると述べる専門家もいます。また、活動量計を着けても運動習慣に変化がない人がいることも示されていました。

そこでオーストラリア・South Australia大学などの研究者たちは、複数の文献のデータを統合し、ウェアラブル活動量計が運動量の変化、血圧や体重などの生理的な変化、さらには心理的な変化をもたらすかどうかを調べることにしました。

分析に用いたのは、既存の系統的レビューやメタ分析を集めてレビューを行う、アンブレラレビューという比較的新しい分析手法です[注2]

7つの文献データベースに2021年4月8日までに登録されていた研究の中から、介入法として活動量計(活動量計、加速度計、歩数計、スマホの歩数計など)を使用し、運動量の変化(歩数または運動時間)、生理的な変化(体重、血圧など)、心理的な変化(QOL〔生活の質〕や痛み、不安など)を報告していたメタ分析を抽出しました。

計39件が条件を満たしました。それらは2007年から2021年までに発表されており、個々のメタ分析が分析対象としていた研究は4件から70件(中央値は14件)で、分析した人の数は167人から7万3440人の範囲(中央値は2003人)でした。31件が成人を対象としており、3件は高齢者を、1件は小児を、4件はあらゆる年齢の人々を対象としていました。20件は何らかの疾患(糖尿病や慢性閉塞性肺疾患〔COPD〕、心血管疾患〔心筋梗塞や脳卒中〕、過体重、肥満など)の患者を対象としており、8件は健康な人々を、11件はそれら両方を対象としていました。

[注1]Ferguson T, et al. Lancet Digit Health. 2022 Aug;4(8):e615-e626.

[注2]系統的レビューとメタ分析とは、知りたい疑問に対する答えを得るために行われた研究の報告をできるだけ多く見つけ出し、それらの中から条件を満たす論文を選んでデータを抽出し、統計学的な分析を行って、信頼性の高い結論を導き出す研究方法のこと。アンブレラレビューとは、既存の系統的レビューやメタ分析を集めて行う、さらなる統合的な分析のこと。

ウェアラブル活動量計を着けることで、心身にどんな変化が?(写真はイメージ=PIXTA)
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歩数は1800歩増、歩行時間は40分増、体重は減少