欧州議会は先月、域内の上場企業に一定の比率で女性取締役を登用することを義務付ける法案を採択した。日本でもコーポレートガバナンス・コードで女性取締役比率の下限を設ける動きがある。
この背景には、意思決定に参加する機会を性別にかかわらず平等に確保し、公正な企業運営を実現させるべきだという価値判断がある。筆者はこの判断に賛成するが、企業経営にとって、女性取締役比率を高めることはどんな影響をもたらすだろうか。
女性比率の引き上げは、幅広い知識と多様な価値観をもたらすことで、経営効率を高めると期待する向きもある一方、能力や経験が不十分な女性の登用を進めると、企業価値を損ねるという懸念の声もある。
女性比率引き上げと企業業績の因果関係を明らかにすることは、一般に考えられているほど容易ではないが、それでも一部の良質な学術研究は、有益な知見を提供している。

ノルウェーでは2008年に公開企業の女性役員比率が4割を超えるよう義務付けた。この改革を評価した初期の研究[注1]では、女性比率の引き上げがかえって企業価値を損ねたことを指摘し注目を集めた。しかし再検証を行った最新の研究[注2]によると、全体としては女性比率の引き上げは企業価値を下げなかったようだ。