何をしているのか分からない人が強い

――企業は人材を社内に囲い込んでいたけど、もう限界に来ています。今後は「プロティアン・キャリア」と「バウンダリレス・キャリア」が二大潮流になると考えています。プロティアンは変幻自在という意味。社会の変化に応じて、自分の意思で自由に姿を変え、形成していくキャリアのこと。バウンダリ(境界)レスというのは、1つの企業や職務など境界を越えて新しい経験やスキルやノウハウを培い、自律的にキャリアを成長させることですね。

「2022年が転換点になる」と話す入山教授

「実はコロナ禍の中、早稲田のビジネススクールの倍率が5倍ぐらいにまで上昇しています。大手企業の30代半ばから40代、50代もいます。『このままではまずい』と新たな学びや出会いを求めています。ここはまさに多様性のある場です」

「プロティアンでイメージするのはマドンナですね。歌手からダンサー、そして女優と次々挑み、中途半端という指摘もあるけど、ショービジネス界で一番長く成功している。彼女は何者なのか、とらえきれない。そこで単に『アイコン』と呼ばれるようになった。変幻自在、多様なタグを掛け合わせ、新しい独自キャリアを形成したわけです。これからは自分が何をやっている分からないぐらいの人の方が強い。一方で社会はネットワーク型になっている。大企業でも副業を認められ、バウンダリレス化している」

――今、パーソルキャリアが仲介役となり、8社の社員が相互副業する試みも始まっています。終身雇用制が崩壊し、副業や転職が増加、もはやシングルアイデンティティーの時代ではありませんね。

「2022年は転換点になるでしょう。今年、スタートアップ企業に勤める30代の社員の給料が大手企業を抜くかもしれません。大転職時代が到来しますよ。年齢的な障壁も40代前半までの人にはなくなるでしょう」

――企業側はどうしたらいいのでしょうか。

「課題はCHRO(最高人事責任者)の存在。日本企業には圧倒的に足りない。社長と同じ目線で時にはケンカしてでも自分の会社を魅力的にしないと、社員は一気に辞めてゆきます。CHRO人材が少ないので、3~4社兼任するケースも出てくると思います」

――企業は「人的資本経営」が必要になります。経営戦略と人材戦略をつなげ、人材育成にどんどん投資していないと、会社の魅力を上げられないですね。

「人材が革新的ではないと、イノベーションは起こせない。大きな投資をしてでも魅力的な企業文化、組織づくりをすることが必要です」

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大企業幹部の考え方を変えるには……