ミシュランガイドに掲載、女性シェフの新感覚フレンチ

「カマスのマリネとフヌイユサラダ仕立て」には少し熟成した日本酒を合わせて

「フランス料理らしい満足感や華やかさはありながらも、食べ疲れしない、体に負担の少ない料理を心がけています。私も本当に食べることが好きだから、外食でも自宅でも、すべての食事をお客様においしくいただいてほしい」と話す川副さん。

コース6800円のプリフィックス(前菜2品、メイン、デザート)と1万500円のシェフおまかせ(8皿程度)の2種のコースがある(税サービス料別)。今回は日本酒を薦めてもらいながら6800円のコースを選んだ。

1品目は「カマスのマリネとフヌイユサラダ仕立て」。フランスでフヌイユと呼ばれる香草、フェンネルのさわやかな香りが広がる白身魚のマリネ。バジルソースのほかに、ダイコンの白いドレッシングや梅ソースなどもあしらわれている。

そこに薦められたのは日本酒「木戸泉DEEP GREEN 2017」(千葉県いすみ市の木戸泉酒造)で、山田錦使用の無ろ過原酒。木戸泉酒造と言えば“高温山廃仕込み”が有名だが、自然醸造による力強いうまさとコク、乳酸によるしっかりした酸味があり、日本酒もソースの一つのような役割を果たしている。

和食であればさわやかな白身魚には淡麗辛口などの日本酒を合わせるところかもしれないが、最初からどっしり濃厚な日本酒を供するあたりがフレンチらしい。川副さんの実家近くにある仲の良い蔵元なのだとか。店員といすみ市テロワールの話で盛り上がる。

「鮎のパートブリック焼き」。稚アユだと右のような盛り付けになる

2品目は「鮎のパートブリック焼き」と「鱧(はも)のベニエ」のどちらかを選ぶことになっている。前者は旬のアユを背開きにしてハラワタなどを除き、クレープ状の皮(パートブリック)で包んで揚げたもので、こちらを選択。アユの頭から丸ごとカリッと食べられるのでとても香ばしく、木の芽ソースがよく合う。さらにアユの肝とフォアグラの濃厚なパテを付けて味わう。

アユの肝や木の芽などに合わせる酒は日本酒の「afs(アフス)」(木戸泉酒造)。こちらもうま味と酸味のしっかりした“高温山廃仕込み”の日本酒だ。香魚、しかもその肝ともなると、合わせるワインがなかなか思いつかないものだが、複雑味のある日本酒とは見事にマッチしていた。

4種から選べるメインでは「房総産ジャージー牛もも肉のロースト」をセレクト。肉の火入れが絶妙で、甘いうま味が広がる牛肉にはやさしい風味のマッシュルームのソースがかけてある。ツルムラサキのクセになる苦味がいいアクセントになっている。

ここで初めて赤ワインが登場。イタリア・トスカーナのカベルネ・ソーヴィニヨン。しっかりしたタンニンのうま味が広がりつつも、後味がどこか甘めなので肉のうま味とも見事にマッチした。

左は「房総産ジャージー牛もも肉のロースト」。右はデザート「びわのコンポート」。貴醸酒を合わせて

最後のデザートの「びわのコンポート」には、SAKEのパリ醸造で有名な「WAKAZE」の「ORBIA LUNA」 が特別に供された。山梨のワイナリーの白ワインのオーク樽で熟成させた貴醸酒。通常、水を使うところをぜいたくに日本酒を使って醸したデザート日本酒で、ビワの上品な香りとスッキリした甘味が合った。

今回の2店は旬の和食材などを柔軟に取り入れながら、UMAMIを追求するなど、日本人らしい新感覚フレンチの魅力を発信していた。どちらも日本酒を上手にセレクトすることで、全く新しいフレンチの価値を生み出していた。この機会に、ぜひ新しいフレンチの味わいをお試しあれ。

(フードライター 古滝直実)

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