企業での導入が進む「リスキル」支援

大手企業で何十年も勤め上げてきた人は、自身の経験・スキルにそれなりの自負を持っているのだと思います。しかし、「これからの時代は通用しない」と、謙虚に受け止める姿勢も大切です。実際、早期退職を検討している人たちには、ビジネススクールに通う、資格取得に向けて勉強するなど、「学び直し」の行動を起こしている方が少なくありません。

一方、企業側も、従業員に対して新しいスキルを身に付けさせ、人材価値を向上させる取り組みに力を入れ始めています。これは「リスキリング(リスキル)」といわれ、今後、広がっていきそうです。近年、企業がリスキルに取り組む目的には、次のようなものがあります。

・DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したいが、デジタル人材を採用できない。自社社員を教育することで、これからの時代に適合する、デジタルリテラシーを持った人材を育成する

・働く個人の間で「会社に依存せず、独自でキャリア構築する」という意識が高まっている中、新たなスキルを身に付けられるプログラムや機会を従業員に提供することで、自社に対するエンゲージメント(愛着、共感)を高めたい

このような背景から、従業員が受講できるオンライン学習サービスなどを導入する企業も増えています。(参考記事「仕事に役立つ学び 個人仕様にカスタマイズする時代へ」)。自社にこうしたリスキルの制度があるなら、それを積極的に活用してはいかがでしょうか。

ニーズが高まる職種への就業・スキル習得を支援する企業も

では、早期退職後、これまでの経験をそのまま生かす再就職先が見つからない人はどうすればいいでしょうか。過去には、小売り・飲食・宿泊・サービスなど、人員が必要な労働集約型の業界が受け皿の一つになっていましたが、コロナ禍ではそのニーズが減りました。コロナ禍が落ち着けば、ある程度の需要は戻るでしょうが、どの業界でもDXが進む中、以前ほどの人員は必要とされなくなる可能性もあります。

一方、ニーズが高まっている分野もあります。以前の記事「猛烈営業マンはもう限界 科学的に捉え、創造型仕事に」でも触れた「インサイドセールス」「カスタマーサクセス」などです。

「インサイドセールス」とは、見込み客に対して電話、電子メール、ダイレクトメール(DM)、チャットなどでコミュニケーションを取り、ニーズを探りつつ関係を構築する営業職のことです。「カスタマーサクセス」は、契約した顧客が商品・サービスをより効果的に活用して目的を達成できるように支援する仕事です。

サブスクリプション型やSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型のビジネスを手がけるベンチャー企業では、これらのニーズが逼迫(ひっぱく)。若手層の採用に苦戦し、採用対象年齢を広げる動きが見られます。

「若手が採用できないからミドルやシニア」という考えだけでなく、ミドル・シニア層が培ってきたコミュニケーション力、顧客ニーズをつかむ力、顧客との関係構築力に期待を寄せる企業も見られます。

こうした新しい職種への転換を支援する企業も出てきました。

例えば、シェアエックスという会社ではインサイドセールス、カスタマーサクセスなど、オンライン上で行う「リモートセールス」のスキル習得・就業を支援しています。未経験者はこれらの仕事に就き、報酬を受け取りながら、実務経験を通じてスキルを習得できる仕組みです。

「いずれは早期退職が現実的。だが、これまでの経験・スキルを生かせる仕事はないのでは」と不安を抱いている皆さんは、今後ニーズが高まる仕事に目を向け、それに必要なスキルを学び始めてはいかがでしょうか。今はオンラインセミナーも充実しているので、ぜひ新たな可能性を探ってみてください。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
森本千賀子
morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

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