名物の飴細工(左)とマカロンタワーが店内にそびえる

パティシエは誰とでもつながれる

パティシエの登竜門であるハンガリーでの菓子の世界大会で準優勝したことで、「ピエール・エルメ・パリ サロン・ド・テ イクスピアリ店」(千葉県浦安市、現在は閉店)のシェフを任された。その後も都内の有名ホテルで菓子職人としての腕を磨き、本場のパリで通用する菓子を作りたいと、自分の店を構えたのが3年前だ。

福祉施設とタッグを組んで誕生したブールドネージュ。お菓子作りを通じて仕事の舞台が広がり、「パティシエは誰とでもつながれる」と遠藤さんは実感する。カメリア銀座でのブールドネージュの出足も好調で、4種類・計120袋の最初の納品分は発売から約2週間でほぼ完売。月末までに計280袋分を追加発注し、施設側もうれしい悲鳴を上げた。

遠藤さんが監修したブールドネージュと、他の福祉施設の焼き菓子、高級コーヒー豆などをセットにした商品は、東光さんが立ち上げた「スイートハートプロジェクト(SHP)」でも既に販売している。SHPは福祉施設を応援する有志の会だ。様々な企業に呼びかけ、直接販売したり、ネット通販で新たな販路を開拓したり。そんな努力が実を結び、ジワジワとブールドネージュの評判も広がりつつある。軌道に乗れば他の福祉施設にも広げ、遠藤さんも次の菓子のレシピに着手する考えだ。

印象深いエピソードがある。遠藤さんの店で取材中、女性パティシエがケーキを手に「シェフ、これでどうですか?」と恐る恐るやってきた。遠藤さんはマスクを外し、ケーキの一片を口に運び、厳粛な面持ちで吟味した後、黙ってうなずいた。その瞬間、彼女の表情が一気に緩んだのを覚えている。

後輩を指導するのも自分の務めと自覚する遠藤さん

今年10月初旬、カメリア銀座へ再度取材に行くと、くだんの女性パティシエを呼び出し、「よかったら彼女の写真を1枚、撮ってもらえませんか?」と遠藤さん。一切の妥協が許されないパティシエの世界。叱責もつきものだが、「後輩たちが独立してやっていけるよう指導するのが、僕の役割でもあるのです」。

画廊の1枚ガラスをそのまま生かしてショーケースに見立て、店内の菓子やパティシエの仕事ぶりが見える「お菓子のテーマパーク」。それが遠藤さんの理想の店という。その言葉通り、ガラス窓の前には、テーマパークの舞台装置のごとく金色の飴細工のオブジェと、マカロンを飾ったケーキタワーがそびえている。

(ジャーナリスト 嶋沢裕志 、写真 遠藤 宏)