
■その日にとれたものを缶詰にして食べる発想
島根県浜田市の水産加工業者「シーライフ」は、これまで誰もやってこなかった革新的な缶詰を作っている。それは、製造当日まで魚種が何になるか分からないという“日替わり”缶詰である。
地元・浜田港には高級魚であるノドグロをはじめ、様々な魚介類が水揚げされるが、その中には市場価値の低い未利用魚も少なくない。「サイズが小さい」「小骨が多い」といった理由や、漁獲量が少ないといった理由で回避されていた。加工業者にしてみれば、仕入れる数が少ないと製造効率が悪いし、販売もしづらいのはわかる。
しかし、せっかくとれた天然資源なのだから、使わないのはもったいない。少量でも缶詰にすればいいのではないか。そう考えてシーライフが缶詰事業を始めたのが2017年のこと。1日に製造できる缶詰の数は約400缶と、数万缶単位で製造する業界大手には遠く及ばないが、製造設備をミニマルにしたため、たった数缶からでも製造できる。未利用魚を活用すれば、漁業従事者の収入アップにもつながる。SDGsの目標の2番目「飢餓をゼロに」などにも合致する取り組みといっていい。
もともと缶詰は、旬の時期に収穫された魚介や果物、山菜などを保存する役割があった。旬の時期は味が良くなるだけでなく、短期間で大量に収穫できるため、どうしても食べきれない分が出てくる。その余剰分を、味を損なうことなく保存できるのが缶詰だったわけ。また、容器のスチール缶やアルミ缶はリサイクル素材であり、日本ではどちらもリサイクル率90%以上を誇っている。そんなエコな缶詰にとって、SDGsはさらに商品価値を高めるためのいい指標なのである。
(缶詰博士 黒川勇人)
黒川勇人
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。