産業活動が残した爪痕が修復されるには何十年もの月日が必要だ。しかし産業用地のなかには、サリーナ・トゥルダのように修復不可能なほど変えられてしまった場所もある。そこで地球の限りある資源を守るには、別の目的のために再利用することが重要になってくる。


環境リスクを伝える
汚染された環境でさえも、産業活動の環境リスクを伝える遺物として「再利用」ができる。その一例としてロカテッリ氏は「フェロポリス」を撮影している。フェロポリスとは、ドイツの都市グレーフェンハイニヒェン近郊にある露天掘りの炭鉱跡だ。地表は洗浄されコンクリートで覆われているが、石炭産業が環境にもたらした影響は否定できない。


ロカテッリ氏の写真に写るのは、かつて地球の資源を採取した巨大な重機群の周りで、色とりどりのライトに照らされて踊る人々だ。あたかも番兵のようにそびえ立つ掘削機は、この土地が炭鉱だった名残だが、同時に環境に優しい未来への願いを込めたモニュメントにも見える。

(文 Maya Wei-Haas、訳 三好由美子、日経ナショナル ジオグラフィック)
[ナショナル ジオグラフィック日本版 2022年12月16日付]