ドイツの都市グレーフェンハイニヒェン近郊にある「フェロポリス」で踊る人々。現在は野外博物館とコンサート会場に姿を変えたフェロポリスは、かつて露天掘りの炭鉱だった。深紅にライトアップされ、写真中央にそびえ立つのは、すでに使われなくなった巨大掘削機「ジェミニ」。フェロポリスは産業用地が公共のスペースとしてよみがえった一例だ(Photograph by Luca Locatelli)ルーマニア中部に広がるトランシルバニア地方の地下およそ100メートルに、黒、白、灰色の層が岩壁に沿って波打つ大きな洞穴がある。古代、この地域は海に覆われていた。しかし海は遠い昔に干上がり、ある鉱物が洞穴の壁の縞模様(しまもよう)として残った。岩塩だ。
ルーマニアのトランシルバニア地方にあるサリーナ・トゥルダのテレジア坑跡。静かな漆黒色の地底湖になっていて、ボートに乗って楽しむ人たちの声や音がこだましている。中央にある構造物は観光施設としてオープンする際に造られた(Photograph by Luca Locatelli)岩塩採掘地の今
岩塩の採掘は1075年に始まり、この地域に大きな恵みをもたらした。現在はサリーナ・トゥルダという名で知られているこの岩塩坑は、1932年に閉鎖されるまで徐々に掘り広げられていった。今、残された巨大な地下空間はアミューズメントパークとして生まれ変わり、訪れる人々を楽しませている。
テレジア坑の下部から見上げた際の写真。後ろにあるのはルドルフ坑に降りるためのエレベーター(Photograph by Luca Locatelli)
テレジア坑の地底湖でボートに乗る観光客(Photograph by Luca Locatelli)サリーナ・トゥルダは産業用地が公共スペースとしてよみがえった一例だ。ナショナル ジオグラフィックの写真家、ルカ・ロカテッリ氏がこうした施設に関心を持ったのは、ごみをなくし、永久にリサイクルを繰り返すいわゆる循環型経済の構想をリポートした2020年3月号の特集記事「世界からごみがなくなる日」の取材中だった。「土地は限りある資源なのです」とロカテッリ氏は言う。
美しい照明で演出されたルドルフ坑。観覧車やミニゴルフ場、巨大なエレベーターが写っている。(Photograph by Luca Locatelli)