オフィスビル内の「料亭」 創作料理に老舗の伝統接待で喜ばれる店①花蝶

様々なタイプの個室を備える「花蝶」。こんな雰囲気の半個室で女子会を開催するのはどうだろう
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ら、安心して通える「行きつけにしたい店」をピックアップして紹介します。

新橋演舞場に程近い東京・銀座7丁目の「花蝶」は実にユニークなレストランだ。オフィスビル内に店舗を構え、1階の入り口は老舗料亭の佇(たたず)まいの門構えだが、店名を示す看板はなんとショッキングピンクがベース。石畳の先にある数寄屋造りの玄関では思わず「靴を脱がないと」と思ってしまうが、そのまま上がって大丈夫。照明を落とした廊下の先にはおよそビル内とは思えぬ、しっとりとした「異空間」が広がる。

かつては「一見(いちげん)さんお断り」の料亭だった。その歴史は1906年(明治39年)にまでさかのぼる。初代の女将が東京・竹川町(現在の銀座)にあった料理屋「花月」に18歳で奉公に上がり、そこで「お蝶」と呼ばれた。「花月」と「お蝶」から一文字ずつ拝借し、それが現在の店名の由来になっている。

新橋演舞場に程近い場所にたたずむ「花蝶」

料亭「花蝶」が現在の地で開店したのは36年(昭和11年)から。その後、太平洋戦争当時には空襲による火災を防ぐための「建物疎開」で木造の店舗を解体、一部を群馬県内に運んだ経緯もあるとか。戦後、再び料亭として再開したが、そんな店の歴史に興味を抱き、研究対象にしている学者もいるらしい。

料亭だった時代には国内の政財界関係者はもちろん、アニメでおなじみのウォルト・ディズニーや映画俳優、チャールズ・チャップリンなど海外の著名人らも数多く訪れたという記録も残る。それから長い歳月を経て、店舗を大幅リニューアルしたのは平成の時代に入ってのこと。

かつての大広間だった座敷は、現在のビルの地階に移築され新たに「メインダイニング」(最大60席)に変わり、創作料理を基調とした料亭風のレストランとして再スタートした。「昭和」の造作をとどめ、それがタイムスリップした気分にさせてくれるが、真っ白で統一されたメインダイニングのふすまに日本画家、福井江太郎が描いたダチョウや現代アート、店舗内に漂うちょっぴり妖艶な雰囲気も「異空間」の演出に一役買っている。

ダチョウのふすま絵が印象的なメインダイニングはかつての大広間だった

また、店内のあちこちに「蝶」をあしらっており、それを探しながら店内を回るのもいい。店内にはそんな「遊び心」も満ちている。

料亭時代をほうふつとさせる少人数対応の個室を7室備えているのも、この店ならではといっていい。室料は別途必要だが坪庭付きの和風個室(椅子席)や掘りごたつ式座敷個室、洋風個室、さらにはカーテンで仕切られている半個室(室料無料)と用途に応じて選択肢が豊富なのもうれしい。ちょっぴり妖しげな雰囲気が漂う洋風の半個室は「女子会などによく利用され、人気です」と長嶺彩香マネージャーは明かす。

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