
和洋折衷のオリジナルな世界
厨房を仕切るのは小林弘治総括料理長。故郷・広島で長年、料理人としての修業を積んだ後に上京。手がける創作料理は和を軸に、時にフレンチやイタリアンの技法も取り入れたもので、和洋折衷のオリジナルな花蝶の世界を創り出す。
花蝶は現在、レストラン事業などを営むフードワークス(東京・目黒)が運営を手がけているが、同社は熊本や大分、山梨各県にグループ企業の農場などを持つ。グループの農場や東京・豊洲市場などから仕入れた新鮮な野菜や肉、魚介類の素材をもとに、「食で季節を感じられるメニュー作りを心がけている」という。

春の魚と思われがちな「鰆(サワラ)」を、あえて秋以降にもメニューに加えるようにしているのも「冬場に向けて鰆は小魚を捕食し、脂がのってくるから」と小林総括料理長。「食材や一皿一皿を巡るトークを通じて、なるべくお客さんに新たな発見や驚きを感じてもらうよう心がけている」と人なつっこい笑顔を見せる。
花蝶の名物メニューは元祖「真鯛(マダイ)のダシ茶漬け」。熊本県内の自社グループの漁場から直送の真鯛を薄く切り、酒とみりん、しょうゆで下味をつけたものをごはんにのせ、そこにダシをかけてお茶漬けとしていただく。ダシの香りと真鯛の味が口の中で芳醇(ほうじゅん)なハーモニーを奏で、気づくと器があっという間に空になっていた。

近くに新橋演舞場や歌舞伎座がある場所柄、観劇の前後に訪れる客も少なくないという。ランチタイムはもっぱら女性客が中心で、夜は企業の接待の場などとして利用されるケースが多いという。新型コロナウイルス禍で一時期、客足は鈍ったが、最近は「徐々に少人数での予約客が増えてきた」(長嶺マネージャー)。とはいえ、個室利用に際しても、当面は「密」を回避するため、扉は少し開けた状態にしている。感染予防対策には最新の注意を払っている。
企業の接待はもちろんだが、家族での記念日の会食や女子会などで「異空間」でのひとときと、創作料理を楽しんでみてはどうだろう。いつもとはまったく違う時間が過ごせるはずだ。
(堀威彦)