誰もが納得する新語・流行語を見付けにくい時代へ

そもそも時代を象徴するキーワード自体を絞りにくい状況になってきたところもあるだろう。その証明ともみえるのは、「現代用語の基礎知識」の孤高の立ち位置だ。実は類似の「時代キーワード本」は過去にはかなりの競合があった。たとえば、「現代用語~」の向こうを張る形で集英社が1986年に創刊した「imidas(イミダス)」。しかし、20年後の2006年に休刊し、現在は電子辞書やネット百科事典として運営されている。

毎年、中身を更新するタイプでは「知恵蔵(ちえぞう)」もあった。朝日新聞社が「imidas」に続いて89年に創刊したが、2008年以降は事典サイト「みんなの知恵蔵」に移行した。「知恵蔵」は毎年、「Word of the Year」を発表していたが、こちらも06年で終えている。

「現代用語~」に対抗した、ページ数が分厚いタイプの「imidas」と「知恵蔵」は姿を消したが、割とコンパクトな現代用語事典である「朝日キーワード」「日経キーワード」は刊行が続いている。就活生や新入社員からのニーズはあるのだろう。

では、新語・流行語選びに全く意味が薄れたかといえば、そうともいえない。たとえば、国語辞書の老舗出版社、三省堂が発表している「今年の新語」は辞書好きの間でもなかなか評判が高い。辞書を編むプロたちの知恵を集めて、精度を高めているからだ。

その年を代表する言葉のうち、「一過性でない、今後の辞書に掲載されてもおかしくないもの」を選考している。11月30日には選考委員が集まって選考発表会を有料イベントとして開くほどの盛り上がりだ。20年は大賞の「ぴえん」以下、「○○警察」「密」「リモート」「マンスプレイニング」「優勝」「ごりごり」「まである」「グランピング」「チバニアン」がベスト10に選ばれた。

こうした新語はさらに選び抜かれて、新版の国語辞書に加わるケースもある。約8年ぶりの改訂となった「三省堂国語辞典 第八版」は3500語を増補。「アウティング」「犬笛」「カオマンガイ」「ノームコア」「ルッキズム」などの新語が加わる。毎年末の動向をウオッチするのも意味があるが、大きな流れをつかむうえでは、「広辞苑」「大辞林」といった大型国語辞書の改訂も参考になる。

高校生やSNSの新語・流行語リストを眺めていると、かなりの距離感を覚える半面、刺激を得られるところもある。本家の存在感は薄れつつあるのかもしれないが、もっと多様な「私の2021年新語・流行語」のような発信があれば、言葉の面での「断絶」を少しはやわらげる効果が期待できるように思う。自分にとっての新語・流行語をトップ3ぐらい選んでみるのは、頭の体操にもなりそうだ。去年は「3密」が大賞に選ばれた「新語・流行語大賞」。年間大賞とトップ10は12月1日に発表されるから、照らし合わせてみるのも一興だろう。

梶原しげる
梶原しげる
 1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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