副業にあてられる時間は週50時間
――年齢によって取り組み方は変わりますか?
「新しいことにチャレンジしたいのであれば、年齢は基本的には関係ありません。既にある程度スキルを持っていて、それを生かした副業を始めるのであれば1、2カ月で収入を得られることを目標に頑張るとよいでしょう」
「仕事などで経験を積んできた人で注意したいのが、KPI(評価指標)を立てて取り組んでしまうこと。先に説明した『人との出会い』の段階を例にすると、1つのイベントで30人と知り合いになろうと名刺交換に精を出す人がいます。いくら多くの名刺を持っていても、どんな人に出会い、どんな話をしたのかが自分のなかに残っていなければ意味はありません。数ではなく、大切なのは質。とくに『人との出会い』の段階では、『セレンディピティー(偶然の出会い)』もあります。イベントに参加するという手段を目的だと見誤らないようにしましょう」
――「本業が忙しいのに副業なんて……」という声もあります。
「私が副業をしているのは、本業の勤務を終えた平日夜や土日です。まず、自分の今の時間の使い方はどうなのかを把握しましょう。例えば、9時から23時までを仕事のために使える時間として、本業の勤務時間を17時半までとします。平日17時半~23時までの5.5時間と、休日の9~23時を合わせると、週のうち約50時間が、副業に充てられる時間となります。使える時間を認識することが大切です」
「時間を確保するために大切なポイントが2つあります。1つ目は、時間をつくること。仕事のスピードを上げ、効率よく仕事をしましょう。例えば、普段の業務でもフォーマット化するなどして今よりスピーディーに進められる仕事はないか、見直してみてください。2つ目は、時間をマネジメントすること。ウェブ上の共有カレンダーなどに予定と作業時間を入れて、自分の稼働を可視化しましょう。自分の使える時間と作業時間を理解して動くことが大切です。突発的事項にも対応できるよう、ある程度ゆとりのあるスケジュールにすると理想的です。これを同僚や家族にも共有しておくと、理解や協力が得られやすくなります」
短期的な結果を求めない
――副業に取り組むにあたり、気持ちの上で気を付けるべきことはありますか。
「3つあります。1つ目は、自分が楽しいと思ったことに挑戦すること。それがモチベーションの源泉となります。自分で決めて活動するのが副業です。決してつらいことに取り組む必要はないですし、楽しくなければ継続できません。苦しみながら副業をしようしても、本業で働いているのと感覚が変わらないまま労働時間が増えるだけ。極端な言い方をすれば『飲みに行くか、それとも副業をするか』、つまり遊ぶという選択肢と対等に副業について考えられるとよいでしょう。心から楽しいと思えることを見つけ、取り組むのが一番です」
「2つ目は、謙虚であること。自分が本業で身につけたことを『上から目線』で話していたら、相手にとっても気持ちのよいものではないですし、そういう人は副業をしても契約の延長につながりにくいです。『次もあの人に相談したい』と思われる関係性を築くのが理想です」
「3つ目は、短期的に結果を出そうとしないこと。お金を稼ぐことを焦らず、長期的なキャリアを見据えて活動することです。私自身は、本業以外の活動を始めてから今の体制・取り組みに至るまで11年かかっています。始めた時と今では考え方も方針も変わってきていますし、失敗もしました。今後も考え方は変わるかもしれません。これから副業を始めたい人は、この先10年後や20年後に、自分がどのような人生を歩みたいかを仕事軸ではなく、プライベートを軸に考えて逆算し、進めていきましょう」
「資格の取得を例に考えてみると分かりやすいですが、資格をとることと世の中で成果を出すことは全く違います。3カ月勉強すればとれる資格もあるかもしれませんが、それをもとに収入を得る、相手にお金を払ってもらえるレベルにたどり着くには、時間がかかるでしょう。時間をかけて成長していこうという気持ちでいたほうが、楽しく副業を続けることができます」

(日経転職版・編集部 木村茉莉子)