①象使いに方向性を与える

「具体的な改善の方法」と「改善した後のゴール」が話の中に含まれているかを見てみよう。相手への依頼内容が曖昧だと、理性的な象使いも迷ってしまい、象に指示が出せない。例えばソフトウエアを作っているエンジニアに、「顧客がソフトウエアを使いにくいと言っている」とだけ言っても動いてくれない。「このオブジェクトを回転させやすくして」などの具体的指示があった方が動きやすい。さらに改善がされた先に、自分や組織にとってどんないいことがあるのか、ゴールも教えてあげる必要がある。

②象をやる気にさせる

「人の感情を動かす工夫」と「どのような人をたたえる・育てるか」が話に含まれているかを見てみよう。エンジニアに顧客の困りごとを間接的に説明するよりも、マジックミラー越しにユーザーが困っている姿を直接見せたほうが感情が動く。そうすれば誰かが説明しなくとも、自然と解決策を考え始める。さらにその後、実際に顧客の困りごとを解決したエンジニアがたたえられれば、人の行動は変わりだす。

③道筋を定める

新しく示した活動が一過性のものにならないように、「習慣や環境自体が変わる」仕組みが話に盛り込まれているかを見てみよう。例えばエンジニアの例であれば、顧客のフィードバックがエンジニアに共有されるタイミングが、開発プロセスに組み込まれているかを確認しよう。

大事なのは中身か伝え方か(写真はイメージ=PIXTA)

場面ごとの調整が大事

筆者が考えるに、対話の場面ごとに3つの視点の濃淡を調整することが大事だ。例えば、大勢の人を相手にしたり、瞬時に出資の判断などを求める際は②の感情的要素に重点を置くとよいであろう。一方で現場への改善運動や行動変革を求める際は、①と③の要素に重点を置いて対話をすすめることが大事であろう。何をすべきか、そのための環境がしっかりと整っているのかは当事者にとって重要なことだ。

しっかりと中身を考える視点が身につけば、「儀式的なプレゼンをして終わり」ではなく、意味ある対話ができるようになるかもしれない。

丸健一
 2009年、一橋大学公共政策大学院卒、野村総合研究所入社。大手企業社長・役員のメンターとして戦略策定、海外展開支援を手がける。研究者へのコンサルティングスキル移転などエバンジェリスト育成にも注力。自社コンサルティング事業本部の教育担当も2年間務める。慶応義塾大学卒、ロンドンビジネススクールMBA。

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