Think Impacts代表取締役・只松観智子氏「経営トップの強い関与が重要」

企業経営になぜ女性役員が必要なのでしょうか。女性役員比率の向上を目指す「30%クラブ・ジャパン」創設者で、Think Impacts(シンク・インパクツ)代表取締役の只松観智子さんに、日本企業の課題と役員比率30%を実現するための方策を聞きました。

――30%クラブ・ジャパンには資生堂の魚谷雅彦CEOや味の素の西井孝明CEOら、大手企業の経営者が賛同・加入しています。企業経営にとって女性役員を登用するメリットは何ですか?

Think Impacts 代表取締役の只松観智子さん 2021年8月までデロイトトーマツに勤務し、只松美智子と名乗っていましたが、独立起業を契機に通称「観智子」を使っています。同一人物ですが、表記に要注意。

「端的に言えば持続的成長のためです。企業を取り巻く経営環境は複雑になり、変化の速度も増しています。高度経済成長期は、米国など海外に手本となる企業があり、それを模倣することで日本企業は成功できました。ただ、テクノロジーの進化など経営環境は当時と全く違います。何が正解なのか。答えは簡単に見つかりません。経営判断を下すとき、取るべきリスクと回避すべきリスクを的確に選ばなくてはなりません。そのためにはメンバーの多様性が不可欠です。様々なバックボーンを持つ人たちが、それぞれの知識と経験に基づき、多様な意見を出すことで、リスク管理ができるようになり、より適切な経営判断が下せます」

「ステークホルダーに配慮した経営も重要になっています。自社だけが利益を上げれば良いわけでなく、株主や取引先、従業員、地域社会など様々なステークホルダーにも利益をもたらすことが企業に求められています。ESG(環境・社会・企業統治)に合致した経営です。多様なステークホルダーの期待に応えるには、経営サイドは多角的な視点が必要で、そのためにも取締役や監査役など経営判断を下す側に女性を含む多様性が必須です」

――女性役員の登用について、日本企業の現状をどう評価しますか?

「東京商工リサーチの調査では平均7%になってます。ただ、すべての企業がこのレベルに達しているわけではなく、二極化が著しいとみています。TOPIX100の構成企業でみると、女性役員比率は現在15%程度。ここ数年、毎年2ポイントくらい順調に増えています。女性役員が1人もいない企業は数社程度。ダイバーシティー(人材の多様性)は機能し始めると、一層多様性が加速する性質があるので、TOPIX100に限れば2030年までに女性役員比率30%という目標は達成不可能な数字ではありません」

「問題は状況改善が見られない残る企業群です。業種ごとに女性社員比率が異なっているので、登用しやすい企業と登用しづらい企業に分かれるのも仕方ないかもしれません。でも、現状進んでいる企業と進んでいない企業を分ける要因は経営トップのコミットメントだと思います。なぜ女性役員を登用しなくてはいけないのか。企業のガバナンスを高めて、持続的に成長するのに必要だということを分かっていないようです。理解しているとしても、その実現に向けてどんな手を打つべきか、施策への関与が不足しています。女性を登用するとなると、これまで既得権者である男性は立場が脅かされます。改革を進めるにも現場の反発が生じます。それでも改革を進めるには経営トップの強いコミットメントが欠かせません」

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