ビワマスや小アユ… 豊かな湖の魚を堪能

近江八幡市文化会館の古い建物の中にありながらもエレガントな店内の「Vite(ヴィーテ)」

一方、滋賀県琵琶湖畔の近江八幡市には、「琵琶湖イタリアン」を謳(うた)うイタリア料理と手作り弁当の店「Vite(ヴィーテ)」がある。高岡洋文オーナーソムリエは大学時代にイタリア語を専攻し、ローマの日本国大使館で働き、イタリアソムリエ協会のソムリエ資格を取得。京都のリストランテ数店に勤めたあと、細君の母親が経営していた近江八幡市の弁当店を引き継ぐのと前後して、イタリア料理店を開いた。

「市の文化会館は公的な建物なので、最初はワインなどアルコール類が出せなくて悔しい思いをしました」と高岡ソムリエは苦笑する。店のコンセプトを考えるに当たって大切にしたのは、「滋賀県と近江八幡市、琵琶湖の素晴らしさを、イタリア料理を通じて表現すること」(高岡ソムリエ)だった。

料理を担当するのは、京都の老舗イタリア料理店からイタリアのミシュラン星付き店での修業を経て、京都のリストランテのオーナーシェフ時代に高岡ソムリエとタッグを組んでいた岩原信久総料理長。パナマ大使付き公邸料理人も務めたというユニークな経歴である。

「Vite」の、湖魚であるビワマスや小アユを使った前菜盛り合わせ

6月末に特別にいただいたメニューは、「ビワマスの完熟トマトソース」「ブラックバスのフェンネル風味」「小鮎と新玉ネギのオレンジ入りマリネ」という前菜盛り合わせで始まった。サケ科のビワマスは薄いオレンジ色をした琵琶湖特産のマスで、琵琶湖にしかいない固有種16種のうちの1つ。とろりとした身がトマトソースの酸味と甘みに合う。

スズキ目サンフィッシュ科のブラックバスは琵琶湖だけでなく全国各地で繁殖している魚で、臭みがあるイメージだが、「湖水がきれいな湖北地域で獲れたものは特に癖がなく、食べやすい」(岩原シェフ)。高岡ソムリエによると、湖北の方が人口が少ないことと、河川一本だけから湖水が流出する湖南に比べて湖北には多くの川から水が流入することから、水質がよいという。小アユは、琵琶湖から川をさかのぼって大きくなったものと違い、10センチほどのアユで、初夏から夏が旬。丸ごと揚げてマリネした小アユの内臓のほろ苦さは、新タマネギの甘味とオレンジ果汁の爽やかさがアクセントになる。ヴェネツィアのイワシのサオールという南蛮漬けのような料理から、岩原シェフはイメージした。

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