高齢者の筋肉や筋力の減少をサルコペニア、そこに精神的な弱りが加わった状態をフレイルと呼ぶが、一方が他方を誘発し、心身ともに介護が必要な状態が進んでいく。それも、何でもやってあげれば良いというものでもない。日本では寿命と健康年齢の間に10年もの差があることを忘れてはならないのだ。10年も寝たきりになるのはあまりに忍びない。目の前でそういう方たちを見てきたから、少しでも長く本人の身体的機能と脳の機能が残るように、自立性を保てるような介護ができたらと思う。亡くなった祖母が好きだった山歩きをできるだけ長くさせてあげるにはどのような方法があったのか。

とにかくすぐにできるのは、手すりを家中に張り巡らせること。お風呂が危ないので、すぐに取り付けられる全身シャワーの設置などは効果的だ。これは椅子に腰掛けたまま全身にくまなく浴びられるように、お湯の吹き出し口が配置されている。シャワーでは冬に頼りない気がするが、実際試してみると湯船につかった時のように首や肩、足腰までよく温まり、水圧がかからないので心臓への負担も少なく、程よいマッサージ効果も得られ、何より湯船に転落する危険がなくなる。介護で学んだことは自分の介護の種になる。親が残してくれる遺産である。
(おわり)
高木美保(たかぎ・みほ)
1962年生まれ、東京都出身。84年、映画「Wの悲劇」でデビュー後、ドラマ「華の嵐」の主役をはじめ、NHK大河ドラマ等に出演。またバラエティー番組にも挑戦し、人気を集める。98年11月、自然と共にある生活を求めて、栃木県那須高原に住まいを移し、農業にも取り組む。現在は芸能活動に加え、講演や執筆業など幅広い活動を展開。著書多数。
1962年生まれ、東京都出身。84年、映画「Wの悲劇」でデビュー後、ドラマ「華の嵐」の主役をはじめ、NHK大河ドラマ等に出演。またバラエティー番組にも挑戦し、人気を集める。98年11月、自然と共にある生活を求めて、栃木県那須高原に住まいを移し、農業にも取り組む。現在は芸能活動に加え、講演や執筆業など幅広い活動を展開。著書多数。