私が病院の勤務医だったときに、とある患者が夜中に亡くなったことがありました。死亡宣告は当直医がしたものの、死亡にいたった経緯については、難病だったため、担当医が説明しなくてはなりませんでした。翌朝までに死亡診断書がないと葬儀が遅れるという理由から、主治医の私が呼び出されました。夜も遅かったので晩酌をすませて、顔が赤らんでいたため、とっさに顔に白く薄化粧(なんと、マヨネーズ!)をほどこし、ご遺族に説明したことがあります。

「夜間医療」には、さまざまな苦労があります。この難題について最近、「自宅待機中の医師がオンライン医療で対応」できるという、「新たな制度」についての報道がありました。https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t349/202201/573460.html

この制度変更は夜間医療に、大きな影響をもたらします。医師は自宅にいて、オンラインで患者を診察することができます。患者さんは「119」に電話しなくても開業医や専門医に、オンラインで相談できます。「コロナ禍医療」のためだけではなく、夜間医療のあり方を、一変させる大変革になるかもしれません。昼夜を問わず24時間、医師がいるクリニックができますから、その「医師の求人・求職」市場にも、コンビニが24時間営業になった時なみの、大きな衝撃を与える事は必須です。私のクリニックなら「夜間専用の医師」を雇用することができてしまいます。

「二刀流」医師が誕生!?

昼から夕方まで他の仕事をして、夕方から夜だけ医師の仕事をする「二刀流」をもつ医師もうまれてくることでしょう。「医師に転身したスポーツ選手」と検索すると、五輪金メダリストやメジャーリーガーもたくさん、見つけることができます。元カージナルスのマーク・ハミルトンは医学部を卒業し、コロナ治療の最先端に立つと現地メディアが報じています。野球選手と医師との「二刀流」も可能になる時代は近いと考えます。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61758000R20C20A7I00000/

こうした事態を想定して、実際に「オンライン医療」システムを構築していた医師は少ないかもしれません。ですが、私にとっては、想定範囲内でした。新しい「フォーマット」を作ればいいわけです。いつか、それを、このコラムでご紹介します。

ただ、ひとつだけ心配な状況があります。死亡診断書を書かなくてはいけない場合です。死亡診断書に、誤診や偽造は許されません。天才外科医を主人公にした韓国ドラマ「浪漫ドクター キム・サブ」には、病死か外因死かをめぐり死亡診断書の偽造が、大波乱を及ぼす印象深いエピソードがありました。

医師がしっかりとした所見にもとづき、判断して正確な診断名を書かないと、大変な犯罪につながりかねません。万が一であっても、「他殺」を「自殺」と診断するようなことがあってはならないのです。

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現代の「常識」が未来では「非常識」に