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欧米の先進IT企業を中心に経済学の知見をビジネスに生かそうという動きが広まっている。DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まる中、その動きはIT業界にとどまるものではない。経済学の社会実装というミッションを掲げて事業展開するエコノミクスデザイン(東京・新宿)の代表取締役、今井誠氏がその背景や具体的な実装例、活用に向けた経済学の学び方を解説する。

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2018年11月から21年12月まで、「経済学×ビジネス」のワークショップを運営していました。そのワークショップの内容の一部が、『メカニズムデザインで勝つ』(20年刊、日本経済新聞出版)で、紹介されています。ワークショップに登壇いただいた企業の経営者の方々は、学知のビジネス活用にとても貪欲です。

ここで一つ、ご登壇いただいた一人の企業経営者の話をしたいと思います。

きっかけは司法書士と依頼者のマッチング

その企業とは、エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)です。東証プライム(当時、東証1部)に上場しており、米国のエスクロー制度に倣い、不動産などの取引において中立的な第三者が取引の安全を保証する日本版エスクローの確立を目指しています。今までになかった仕組みを提供することを目指しているEAJにとって、課題解決は前例が見当たらず自ら動き課題解決を行っていました。

最初のきっかけは、住宅購入時の不動産取引の司法書士と依頼者のマッチングの相談でした。司法書士は、不動産取引において不動産所有権移転登記と住宅ローンなどの抵当権設定登記を行います。住宅は、一生に一度の買い物と言われることも多いように何度も経験したことがある人のほうがまれです。よって、依頼者はネットなどに記載されている情報などによる「直感」や第三者からの推薦などから司法書士に登記業務を依頼していました。依頼者の大半が初めてということで、満足度が低くても特段問題が起こっていたわけではありません。しかし、説明をじっくりしてほしいや要点だけを説明してほしいなど、依頼者にはそれぞれの要求があったのです。 しかし、依頼者は、その依頼した司法書士しか知らないので、良しあしが判断できません。

司法書士と依頼者のマッチングの満足度を上げるために、依頼者を含む不動産取引関係者にアンケートを実施することにしました。まずは、各不動産取引が終了するごとに、依頼者他その不動産取引関係者に取引を担当した司法書士についてアンケートに回答してもらうことにしました。不動産取引ごとにアンケートを回収することによって、膨大なアンケート結果を収集することができます。そこから、「レーティング(5段階などで、そのパフォーマンスを評価すること)」の学知を活用して、各司法書士のパフォーマンスを可視化していきました。

依頼者の満足度向上のために行った「レーティング」でしたが、これは司法書士の行動にも好影響を与えはじめました。司法書士が自分のスキルを客観的に把握できるようになったことで、自分自身の得意分野や今後の依頼獲得のために重視すべき点などの把握にも活用できます。

「レーティング」の学知は、依頼者・専門家双方にとって有益なサービスとなり得る。今後も、この「レーティング」サービスには、データがたまっていきます。その結果、精度も向上し、派生するサービスも生まれていくでしょう。

同社も例にもれず、経営陣を筆頭に企業課題解決には学知の実践が重要だという認識の下、さらなる活用を進めています。

写真はイメージ=PIXTA

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