dressing

2022/11/7

統合移転を決意したのはコロナの影響もあるが、「自分の料理のスタイルを変えたい」と思ったことも理由のひとつだと瀬島さんは語る。

「『インド料理でありながらワインにも合うビストロ料理』というコンセプトで7年間やってきました。でもある時、自分の習慣だけで料理をしていることに気づいたんです。年齢的に40歳を越えたこともあって、移転を機にもう一度基本からインド料理を学び直したい、と思い始めました」(瀬島さん)。

そんな時、たまたま新店に応募してきたのが新シェフのニウレさんだった。ニウレさんは、デリーで料理人としてスタート。その腕を買われて、カタールなどの富裕層の多い都市の有名インド料理店で活躍していたという経歴を持つすご腕の料理人。大の日本好きだったことから、6年前に来日。今回のリニューアルオープンで「桃の実」に加わり、瀬島さんとタッグを組むことになった。

新生「桃の実」のディナーセットは、前菜4種の盛り合わせ、数種類から選ぶ炭火タンドール料理、数種類から選ぶカレーというプリフィクススタイル。さっそくその内容を見ていこう。

取材日の「桃の実ディナーセット」の「前菜4種の盛り合わせ」

取材日の「前菜4種の盛り合わせ」は、左上から時計まわりに、「パニプリ 」(インドの定番スナック)、「フルーツトマトのラッサムマリネ」、「ダヒベイガン」(ナスのタルタル ヨーグルトソース)、「フレッシュマッシュルームとコリアンダーのサラダ」。

「パニプリ」の「プリ」は、全粒粉の生地を揚げてボール状にふくらませたもの。上部に穴を空け、スパイスでシンプルに味付けしたポテトを入れるのが一般的。「パニ」は「水」という意味で、甘酸っぱい冷たいスープ。プリの中にパニをなみなみと注ぎ、一口でパクリと食べる。

最初にパリパリした皮の食感を感じるが、プリがくだけた瞬間に甘酸っぱいスープが流れ出し、最後にジャガイモの甘みが残る。次々に食感や味が変わり、一瞬で終わるマジックを見せられたような、目が覚める1品だ。

「フルーツトマトのラッサムマリネ」も、前菜にふさわしいさわやかな1品。インド料理定番の汁物「ラッサム」は辛味と酸味が特徴だが、瀬島流はほどよい辛味とまろやかな味わいに仕上げている。辛すぎないのでフルーツトマトの甘みを繊細に引き立て、一気に食欲がわいてくる。

「ダヒベイガン」は、タンドールで丸ごとこんがり焼き上げたナスを、ヨーグルトとスパイスのソースであえたシンプルな料理。いわばインド風焼きナスだが、とろりとしたやさしい口あたり。4品とも、インド料理とはいえスパイス感は風味付け程度で、洗練された味。瀬島さんの得意とする料理だ。

新店で瀬島さんが追求したいと思っている料理のひとつが、タンドール料理。

スパイスカレーブームで南インド風のカレーを提供する店が多くなったが、カレー店だけが増殖していき、炭火で焼き上げるタンドール料理のような本格的な北インド料理を出す店が減っている。

そこで新店では、ニウレさんが得意とする本場のタンドール料理をメインとして提供したいと考えている。