
今でこそ缶詰は日常食になったが、かつてはそうじゃない時期があった。他に食べる物がないから「缶詰でも食べるか」という、消極的な動機で選ばれることが多かったのだ。しかし「缶つま」と「タイカレー」が登場したことで状況が一変したのであります。
国分グループ本社(東京・日本橋)が販売する「缶つま」シリーズと、いなば食品(静岡市)が販売する「タイカレー」シリーズには、いくつか共通点がある。まず、どちらも開発コンセプトが独創的だったこと。次にSNS等で話題になるにつれ、売り上げを爆発的に伸ばしたこと。そして登場から10年以上を経た今でも、定番商品としてコンビニやスーパーに並んでいることである。
2015年ごろに起きたグルメ缶詰ブームも、18年に起きたサバ缶ブームも、缶つまとタイカレーのヒットの延長線上にある。まさに業界を変えた画期的商品だったわけだが、実は“ある危機感”から開発されたのをご存じだろうか。

国分が缶つまを発売したのは10年のこと。カキや牛肉などを使って14種類を展開し、平均価格は500円ほどに設定。高額なものでは1000円近いものもあり、最初から高級路線でスタートして話題を呼んだ。
しかし、当時の缶詰市場は安売りが常態化していて、売れ筋は100円台が基本だった。300円を超える缶詰は、なかなか売れないと言われいてた時代だったのだ。